第13話

「へえー。それは良かったな」

颯が感心したように言った。

"それで早速店の看板に"夕方から手話の出来るスタッフいます"って書かれてた"

颯との会話は筆談である。

颯はゆっくり話すようにしていたから、心は唇を読む事が出来た。

颯はファミリーレストランでバイトをしてい

た。

十六夜のメンバーは殆どが学校の後でバイトして接客や厨房を学んでいた。

今日は日曜日である。

心と颯は図書館に来ていた。

1週間のおさらいである。

毎日実習があり、バイトもあるため平日の復習は難しい。早朝にオムレツを上手に焼けるように練習するなど、実習で上手く出来なかった所を自主練習していたが、それだけでは補えなかった不明な点をお互いに勉強していた。

「俺はフォンの取り方。手順がイマイチ分からなくてさ」

「仔牛?鶏?」

「仔牛」

"ああ、それは…… "

心はメモに書き出した。

「ありがとう。心は?」

"俺は2番だしの使い方がイマイチ"

「ああ、確か味の濃い煮物に使うんじゃなかったか?」

"煮物か……ありがとう"

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