第10話

ゴールデンウィークが終わり、心はまた横浜に戻って来た。

西洋料理の実習では基本となる4つの包丁の使い方をマスターし、魚の3枚下ろしや丸鷄の捌き方などを教わった。また基本のオムレツも焼けるようになった。

そんな中で心はバイトに行くようになった。


そこには2年目のスタッフ、黒木歩実がいた。

心の指導係だ。

クリッとした大きな目でとても可愛い。

長い髪はきちんと結んでいた。

メイクはナチュラルメイクでとても清潔感がある。

まずは野菜を用意して綺麗に洗う。

刻むのは歩実の仕事だ。

店が混んで来たらひたすら皿洗い。

客がいなくなったら調理場の掃除。

一切客の前に出る事はしない。

心はピカピカになるまで調理台を磨いた。

「耳が聞こえないからどうなるかと思ったけど、ちゃんとやってるじゃないか。歩実の教育がいいんだな」

シェフはそう言って満足そうに笑った。

「料理学校に行っているからでしょう」

歩実も十六夜の西洋料理コースの卒業生だ。今度調理にステップアップするので、今まで歩実がやっていた仕事をするバイトが必要だったのである。

心は毎日懸命に働いた。

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