第3話 ルートチャクラの目覚め
朝日が差し込む部屋の中で、マナは瞑想を終えた。エリカから渡された「ルートチャクラ」のカードは、まるで生命を持つかのように温かな感覚を放っている。深呼吸を繰り返しながら、マナは心の中で昨日のエナジーフォームの感覚を反芻した。
「これが私を変えてくれるかもしれない…。」
そんな小さな希望を胸に、マナは再びエナジーフォームセンターに向かった。
スタジオに到着すると、エリカが穏やかな笑顔で出迎えてくれた。部屋の空気は清々しく、どこか神秘的な雰囲気が漂っている。今日は「ルートチャクラ」をテーマにした特別なセッションが行われる日だった。
「マナさん、準備はいいですか?」
「はい、お願いします。」
エリカに促されて床に座ると、マナは足を組み、手を膝の上に置いた。エリカの声が静かに響く。
「ルートチャクラは、私たちが大地と繋がり、安定感を得るための基盤です。しかし、日々の生活の中で、その繋がりは容易に失われてしまいます。今日は、大地のエネルギーをしっかりと感じながら、そのバランスを取り戻しましょう。」
エリカが示した今日のフォームは「アース・バインド」。両足をしっかりと地面に押し付けながら、上半身をゆっくりと前に倒すポーズだ。この動きは、体の重心を意識させ、地球との繋がりを再確認するものだという。
マナは指示通り、両足を肩幅に開いて床に立ち、膝を軽く曲げて前屈した。両手が地面に触れると同時に、大地から何か力強いものが流れ込むような感覚があった。
「大地のエネルギーを感じてください。その力が足元から体全体に広がり、不安定な部分を支えてくれます。」
エリカの声に従いながら、マナは深く息を吸い込んだ。すると、頭の中に昨日の鐘の音がふたたび鳴り響いた。どこからともなく、赤く光るエネルギーが視界に広がるような感覚がする。
「これが…ルートチャクラ…?」
セッションが進む中で、マナの体と心はさらにリラックスし始めた。しかし、その時、不意に腰に鈍い痛みが走った。長年悩まされてきた慢性腰痛の感覚だ。体を動かすときにしばしば現れるこの痛みは、マナにとって大きなストレスとなっていた。
「大丈夫ですか?」エリカが優しく声をかける。
「少し腰が…痛くて。」
「それもエネルギーの滞りの一種です。無理せず、自分の体に耳を傾けてみましょう。痛みをただ感じるのではなく、その奥にあるメッセージを聞き取ってください。」
エリカの言葉に、マナは目を閉じて痛みに集中した。すると、不思議なことに、痛みはただの不快感ではなく、体からの警告のように感じられてきた。
「もっと休め。もっと自分を労われ。」
そんな声が心の奥底から聞こえてくるようだった。
エリカの指導の下、マナは「ルート・フレア」と呼ばれる新しいフォームに挑戦した。両足を地面にしっかりと固定し、ゆっくりと上半身をねじりながら両手を天に向けて伸ばす動きだ。このフォームは、腰を中心としたエネルギーの流れを整える効果があるという。
フォームを繰り返す中で、マナは腰の痛みが少しずつ和らいでいくのを感じた。同時に、心の中にも暖かい光が広がり始めた。
「自分の体を大事にしよう。」
そんな思いが自然と湧き上がる。
セッションが終わると、エリカがマナに微笑みながら言った。
「マナさん、今日のルートチャクラのセッションを通じて何を感じましたか?」
「痛みは、ただの敵じゃないんだと分かりました。体が私に何かを伝えようとしている…。それに気付けたことが大きいです。」
「その通りです。体の声を聞くことは、自分自身と向き合う第一歩。ルートチャクラは、あなたにその大切さを教えてくれる存在です。これからも、体と心の調和を目指していきましょう。」
マナは深く頷いた。彼女の中には、エナジーフォームへの信頼と、自分を変えたいという思いがさらに強まっていた。
帰り道、マナはルートチャクラのカードを手に取りながら、今日のセッションを振り返った。腰の痛みを通じて、自分がどれだけ体に無理をさせてきたかを痛感した。そして、エリカの言葉が何度も心に響く。
「痛みは、あなたの体の声。」
その夜、マナは再びカードを使って瞑想を行った。心地よい疲労感に包まれながら、足元から広がるエネルギーを感じる。瞼の裏には、赤く輝く光の柱が見えた。それは、マナを新たな旅へと導いてくれる希望の象徴だった。
こうして、マナはルートチャクラの目覚めを通じて、少しずつ自分の体と心を理解し始めていく。そして、この気付きが、彼女の次なる試練への扉を開いていくのだった。
復活のアーティスト からだ @panndamann74
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。復活のアーティストの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます