第2話
彼らの向かい南門より入堂せし夏の国の
彼の握る手綱の先には、連れ物の
その体高は北門に見える巨人機の半分、長身な武僧とは肩が並ぶほどの高さだが、頭部の鋭い
背面と四肢を覆うウロコの
一方、闘技場の東壁にある貴賓席からは、同盟国の諸公や大臣らが、遠眼鏡を手に身を乗り出して、
「あの鋼鉄の巨人、竜のクチバシでは通りそうもないが……」
「では北門の娘に賭けるか?」
口々に、見識や経験を披露し見立てを語り合い、今年の第一回戦の組み合わせにえもいわれぬ唸り声をあげ、身悶えし、金貨を入れた巾着を、北門を意味する金杯の中、いくつ投げ込むかで悩んでいる。
だが、
「──いかが思われましょう、ゴード卿」と、古傷を手や顔に刻んだ武人風体をした貴族に声をひそめ、尋ねると、
「さて。それがしも初めて目にする巨人でして……」そう恐縮しながらも、目を細め、
「しかし、掛けるなら、南門の銀杯。土伏竜のウロコで
囁くように、その扇子の耳元で答えた。
すると、その貴婦人が不人気の銀杯を抱えた下人を呼び、
その様子を見て貴族たちは、うなずき合い、金杯から、南門を意味する銀杯に巾着を慌ただしく回収していくが、「されど……」と、四聖教会の大司教がつぶやいて、摘んだ皮袋を手のひらでふたつ、ためらうように弄びながら、眼鏡の下で目をしばたたかせ、
「ワシも…… いや、皆んなもそうじゃろうが、千人隊長としての講釈を聞かせてもらいたくてのぅ。──駄目かね? ゴード卿」
大司教は上目遣いをした。
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