第8話 フェーレス金貨
問題はやはりフェーレス金貨の行方だろう。そんなことを考えながら僕は領主の屋敷にいた。何人もの使用人がいてなにもしなくても勝手に世話されるという状況を楽しんでいた。
その様子を見たフィディが嫉妬していつもよりも強く抱き着いてきたがそれすらも役得である。
「1,000,000,000シェル。集まると思うか」
「無理だと思います。もし本当にあの老人の言っていることが本当なのだとしたら、今からフェーレス金貨を1000枚集めるのは不可能にちかいです」
無理だった場合はどうしようか。罰は与える必要はあるだろうが、街を壊す程ではないし、かといってあの老人を殺すのももったいない気がする。なんといっても初めての僕の街である。できれば大事に育てたい。
そんな感じに4日ほど領主館で生活していると急にフィディが魔法を行使した。魔力を風に変換して屋敷中にいきわたらせているのだ。
「なにやってるの」
「いくつかの違和感がありましたので、その調査をしています」
しばらく待つと、フィディはやっぱりとつぶやきながら魔法をやめた。
「どうやらこの屋敷には地下へとつながる通路があるようです」
「地下?」
「はい。そもそもあのシレスト金貨は巧妙な細工はしてありますが知っている者が見ればわかる程度の物です。あの騎士たちがなにか関係しているとして、それならば奴らの住んでいたこの屋敷もまた怪しいのではないかと思い注意深く見ていました」
そうなのか。僕なんて何も考えずに過ごしていた。なんだか恥ずかしくなってしまう。ごまかすように僕は話を進めた。
「なるほど。それじゃあ探検と行きますか」
フィディに案内され向かったのは一つの部屋だった。大きさはそれなりで客間だろうと思う。
「どこにあるの」
「この下です」
指をさしたところには大きなベッドが置いてあった。下を覗いてみても穴らしいところは見当たらない。とりあえずやってんるということでフィディにベッドをどかさせた。一見すると一人では動かせそうにないベッドも騎士であるフィディや魔女である僕ならば簡単に動かすことができる。
僕たちは普段、無意識化で魔力を制御して一般人と同程度の力で暮らしやすいようになっているが、いざ必要になれば魔力で強化され一般人とは比べられないほどの肉体強度を発揮するのだ。
どかしたベッドの下は普通の床であった。
「カーペットもどかしたほうがいいか」
「大丈夫です」
いうが早いが、豪快に魔法でカーペットを消し飛ばした。
「おお。豪快だね」
「この程度ならあとでいくらでも補填可能です」
消え去ったカーペットの下からは大きな穴が出てきた。それも沈まないように、板で補強されている。板をどかして穴を見る。階段もちゃんとついていて大人3人程度ならば横並びでも通ることができるであろうくらいの大きさをしている。
「いこうか」
魔法で光球を作り出しライト代わりとしながら穴の中を奥へと進んでいく。すこし進んでいくと横穴も出始めてきた。
「どっちに行きますか」
「まずはまっすぐ行こうか」
下手に曲がらずにまっすぐに降りていくことにした。その道は徐々に大きくなっていき、今では最初の倍以上のおおきさにまで膨らんでいた。
進んでくとだんだんとライトが取り付けられてくるようになった。そのため僕は光球を消して進んだ。
そこには町があった。多くの人が行きかいながら、活気にあふれている地中でなかったら立派な街として有名になるだろう。
「地下帝国あったじゃん」
浮遊都市に対抗してひそかに作ろうとしていた地下帝国はどうやら先を越されてしまっていたらしい。
呆然と立ち尽くしている僕たちに気が付いたのか、一人の衛兵のような人物が駆け寄ってくる。
「おう。兄ちゃんたちここは初めてか」
「ここは何なんですか」
「ははは、まあ最初は驚くよな。ここは楽園デリアンシュだ。」
「楽園?」
「そうさ。ここは支配者のいない自由の街なのさ」
「支配者がいない。そんなことできるの」
一応小声でフィディに聞いた。
「不可能です。末端の人間にはそういう説明がされているだけだと思います。実際には裏から支配しているものがいるはずです。それもいずれかの魔女である可能性が高いです」
「それもそうだな」
そう聞くと哀れだ。無理なことを夢見てるということだろう。
「ここでは何ができるんだ」
「何でもさ。ここは何をしてもいいんだ。自由の街なんだからな」
そういって説明すると衛兵はどこかに行ってしまった。自由の街か。この街にきえたフェーレス金貨があるのだろう。回収するべきなのか。
「どう思う」
「ここはいったん様子を見るべきです。ここまでの規模の物です。間違いなくどこかの魔女は関係しているでしょう。下手な争いを避けるためにまずは情報が必要になってくるでしょう」
そういうことで僕らの方針としてはまず情報収集となった。しかし、地下なのだというのに随分と人がいる。それもグバララとは比べられないほどだ。
まずは街の中央に向けて僕たちは歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます