第52話

北斗がわたしを好き…?


あの北斗が?


口が悪くて態度がデカくて、でも本当は優しい北斗が…?


身体中がカアッと熱くなる。





「何、今気付いたの?鈍すぎだろ。」


渋谷くんは、本気で呆れたようにわたしを見た。


「とにかく…。」


そして小さくため息をつき、窓の方を見る。


外からの光はまばゆいばかりなのに、その姿はまるで黒い影みたいに儚く見えた。





「香夏にはわからないだろうな。俺みたいな異常な人間の、屈折した気持ちなんて。好きな人に気持ちも伝えれず、ただひた隠しに自分を隠して生きて行かなきゃならない人間の気持ちなんて…。」


渋谷くんは、語尾を詰まらせた。

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