世界を滅ぼしたラスボスの子供でも、世界を救ってもいいですか?
佐藤ゆう
第1話 魔女英雄
夕焼け空と、それに赤く染まるビル群がとても綺麗だ。
それが『気球』に乗り、『東京都心』を上空から見下ろした、俺の感想だった。
直後――。俺は 気球から『落ちた』。
ビル群の真ん中に――。
誰かに落とされた気もするけど、一瞬のことでわからなかった。
落下する体が、『ガクン』と大きく揺れた。
閉じたまぶたをゆっくり開けると、誰かに片手をつかまれ、宙に浮いていた。
つかまれながら、宙ぶらりんになりながら、その者を見上げた。
背中には、大きな『白い翼』が生えており、夕焼けに重なる姿は美しく、まるで天上に住まう――
「天使……」
みたいだった。
俺のつぶやきを聞いて天使は無邪気に笑う。
「ブーブーっ。ハズレ」
このときの彼女の笑顔を、俺は『永遠』に忘れることはないだろう。
「あたしは魔女。よろしくね、坊や」
このとき決めたんだ。
《魔女》になろうって。
彼女のような《魔女》に――。
◆◆◆◆
――10年後―――
2030年 【東京】 5月5日
大都会 東京のド真ん中には【巨大な白い塔】が建っていた。
全長一万メートルの、窓もない、飾りっ気もない、殺風景な 白い塔であった。
50年前まで『大東京タワー』と呼ばれていた塔の足元に、『1人の少年』が立っていた。
少年は塔を見上げて、感動で心を熱く焦がしていた。
「ここで俺は、《魔女》になってみせる」
◆◆◆◆
この全長1万メートルの塔の扉は、50年前まで 開かれたことがなかった。
だが ある日 突然、この一万メートルの、窓もない、飾りっ気もない、殺風景な 白い塔の『扉』が開いた。
それは、歴史上初めての事であった。
『死の塔』『まやかしの塔』『神の塔』『大東京タワー』
さまざまな時代で、さまざまな呼ばれ方をされてきた。
現在 この塔は【東京魔女学院】と呼ばれている。
そんな塔の足元に、1人の少年が立っていた。
少年の名は、黒羊 祭(くろひつじ まつり)。
少年は、ある目的でここに来ていた。
それは【魔女】になるため。
自身を救ってくれた憧れの魔女になるためだ。
そのために少年は 今あることをしていた。
遥か50年以上前に、人々がしていたこと。
それは―――
「んぎぎぎぎぎぎぎぎぎッ!」
『素手』で、塔の扉を 無理やりこじ開けようとすることだ。
力一杯込めたが、100メートル以上ある巨大な扉は、ウンともスンともしなかった。
「はあ、はあ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ。やっぱり開かない、はぁー」
疲弊して、両ひざに両手を乗せた。
「はあ、はあ、はあ。お、俺には、魔力はあるはずなのになぁ……変だなぁ……。 聞いた話では、魔力があれば開けられるはずなのにな……はぁ……」
「それは違うわ」
「へっ?」
後ろから声を掛けられ、振り向くと
『真面目で優しそうな少女』と『おとなしく気弱そうな少女』の2人が立っていた。
(めずらしい制服だな? どこかで見たような……あっ! たしか、この学院の制服だ! ということは、この2人は この東京魔女学院の生徒?)
真面目で優しそうな少女が俺の前まで歩いてくると、『右手』をそこそこ膨らみのある胸に置いて、『左手』を後ろにいる おとなしそうな少女に向けて、笑顔を輝かせた。
「名前は【神原 樹(かんばら いつき)】よ。 そしてこの子は【藍原 凛(あいはら りん】。 樹たちはこの学院の生徒なの。 あなたは誰かな? どうしてこの扉を開けようとしているのかな?」
問いかけに答えるかどうか少し迷ったが、意を決して名乗る。
「お、俺は、【黒羊 祭(くろひつじまつり)】です。 開けようとしていた理由は――」
「く、黒羊ッ!」
落ち着いた雰囲気の樹さんが動揺した。
「あ、あの、どうかしたんですか?」
すぐに彼女は平静を取り戻し。
「ううん、なんでもないわ。 ごめんなさい、ちょっと知っていた苗字だったから……」
そして俺に、顔をぐっと近づけてきた。
「それであなたは、どうしてこの扉を開けたいのかな? 興味本意? それとも力試し? ふふふっ。 もしかして不法侵入が目的かな?」
目の前で茶化すように笑う彼女に、うろたえながら反論する。
「ち、違いますっ! 俺は『魔女』になりたいんです!」
「魔女に?」
「は、はい!」
バカにされることを覚悟して言った。 当然だろう。
男が魔女を目指そうとしているのだ、仕方ないことだ。
傷つくが、昔からその悔しさをバネに夢を叶えるための努力をしてきた。だから今回も。
(たしかに俺の夢は、世間からしてみれば理解できない、バカな夢なのかもしれない。 けど、きっと、絶対に。夢を叶えたときに、誰もが認めてくれるって信じているんだ)
樹さんは小さく首をかしげ。
「そっか、祭君は【男の子】なのに、魔女になりたいのね?」
「は、はい……。変でしょうか?」
ゆるやかに彼女は笑う。
「いいえ、変じゃないわ。 樹は 男とか女とか関係ないと思うし。 それに、夢を信じる心は大切だわ。 応援するよ、祭君」
ジ――ンときた。
バカな夢かもしれない。けど大切な夢だ。それを彼女は応援してくれるとまで言ってくれたのだ。
目に涙が溜まるほど嬉しすぎた。
嬉しさのあまり深く頭を下げる。
「ありがとうございます!」
「えっ? は、はい……。 どういたしまして……」
一方的な感謝を受けて まぶたをしばたかせている。そして俺に近づき、両手で 俺の頬に触れて微笑んだ。
「祭君……。 ちょっとじっとしててね」
「は、はいィ!」(こ、これはまさかァ……き、キスゥッ!)
その様子を見ていた、どこか気弱そうだと思っていた『藍原 凛』さんが、俺をキツくにらみ込む。
「キスじゃないからねっ! 樹ちゃんはあなたから感じる魔力が、本物かどうか探っているだけだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」
押し込むような眼光に怯み、あわてて両手を振りたくる。
「そ、そんなことは、全然 考えていませんからっ!」(考えていました、すいません……)
彼女から もの凄い敵愾心を感じるのは気のせいだろうか?
「――感じる。 あなたから【魔力】を……」
「へっ?」
俺の両頬に触れたまま囁くと、隣にいる凛さんが目を見開く。
「う、嘘ォ! そんなことってありえないよ、樹ちゃん! 男の人が魔力を持っているなんて」
(男が魔力を持ってることって、そんなにありえないことなのか?)
俺はいままで魔力があることに何も疑問もなく生きてきたため、男が魔力を持っていることが そんなに珍しい事だとは思いもしなかった。
閉じていた まぶたを開けて樹さんは優しく微笑む。
「うん。 これであなたには この学院に入れる資格があるわ。 あなたは魔女になれるのよ」
ジ―――――ン ときた。
夢が叶うと言われたのだ、当然である。
「で、でも、樹ちゃん、男だよ?」
おどおどしている凛さんに、樹さんはやわらかく告げる。
「関係ないわ、凛。 男とか女とか。 やる気の問題よ」
そして俺に暖かい眼差しを向ける。
「祭君。 何かあったら樹に相談して。 なんでも相談に乗るわ。 もし、あなたに魔女になる資格がないって言う人がいれば、樹がわからせてあげる。 もちろん力尽くじゃないわよ、ふふふっ、言葉でね」
「は、はい!」
俺の夢をこんなに応援してくれたのは、2年前に別れた友人以来である。
この人はきっと誰にでも優しいのだろう。誰にでも味方するのだろ。たぶん、悪でさえ。
「樹さんって、なんか『正義の味方』みたいですよね?」
「えっ!」
何気なく口にしてしまった一言により動揺してしまう。
「せ、正義の味方……。どうしてそう思うのかな?」
「え、えっと……あの、なにか気を悪くしましたか?」
彼女は苦笑し。
「あははっ。ちょっと……じゃなくて、かなり嬉しくて」
「嬉しい?」
「うん。 樹の夢はね、正義の味方になることなの。 この夢はね、人にあまり理解されないの。 子供っぽいとか、カッコつけとかよく言われたわ。 そんなこと気にしないつもりだけど……でもやっぱり、言われたらちょっと傷つくわ」
「わかります、その気持ち」――本当に。
「樹にはね、ずっとなりたくて憧れている人がいるの。 その人みたいに悪から人を守り、その悪さえ許し更生させる、そんな正義の味方になりたいって、子供のときからずっと思っていたの。 だからあなたに、樹が目指す夢を当てられたことがすっごく嬉しかった。 だってそうでしょ? 自分の夢を理解してくれる、わかってくれる、共感してくれる……。 こんなに嬉しい事がこの世の中にあるのかしら?」
「わかりますっ、その気持ちっ!」――本当に。――本当に。
共感し合う俺たちの横で、何故だか凛さんがムスっとしていた。それは嫉妬に近い感情に感じる。
(私のほうが樹ちゃんのことを、ず~~と、ず~~と、深く理解しているもんっ!)――藍原 凛の胸中は、黒羊 祭への対抗心で黒く燃えていた。
樹さんは空を仰ぎ。
「樹は貫き通すわ。 どんなに笑われても、傷ついても、理解されなくても、この夢だけわね」
彼女の想いを聞いて胸が熱くなった。
夢という個人個人が違う、大切で曖昧なモノで争う気はないけど、でも、彼女の想いに感化され、負けたくないという気持ちが膨れあがった。
握手を求め。
「夢のため、お互い頑張りましょう、樹さん!」
「ええっ、祭君」
まぶしい笑顔で握り合った。
その光景はまるで、アニメやドラマのような理想的なライバル関係を彷彿とさせた。
(これが……夢を目指すってことなのかな?)
俺はライバルという関係には、まったく無縁な人生を送ってきた。
だからこういう関係はフィクションであり、現実にはないものだと思っていた。
だからこそ嬉しかった。
ありもしないはずだった憧れの関係が、いま築かれたのだから。
「祭君……」
「は、はい、なんでしょうか?」
いきなり真剣な顔つきに変わったためドキっとした。
「残念だけど、やっぱりあなたは『魔女』にはなれないわ」
「えっ! どういうことですか、さっきまでは……!」
動揺しまくる俺に、申し訳なさそうに告げる。
「ごめんなさい。 さっきはあなたに、魔女になれるって言ったけど、なれない理由があったことを忘れていたわ」
「な、なれない理由……?」
「魔女になるためには、魔力を持っているだけじゃなく、もう一つ条件があるの。 昔はね、この学院への入学条件は『魔力を持っている』ことだけだった。 いついかなる時期でも、この学院にさえ入れれば いつでも入学できたわ。でも今は違う。 昔は常に開いていたこの扉も、ここの生徒しか開けられないし。 この学院で魔法を教わることのできる者も、1年に1度、3月3日、この扉の開放日に この学院に入れた者だけなのよ。 ここに入学して 魔女見習いである魔法少女になるためには、来年の3月3日まで待つ必要があるわ。 それからでも、魔女を目指しても遅くないんじゃないかな?」
なだめるように言った樹さんに、情けない顔をさらしてしまう。
「そ、そんなぁ……。今日じゃダメなんですか? 俺はいますぐにでも魔女を目指したいんです……。やっと、沖縄から旅費をためてここまで来たんです……。ここで魔女を目指すために……。ずっと……ずっと……なりたいって思ってきたんです……」
悔しさあふれる脳内に、アイディアが ぴーんと閃いた。
「そうだっ! じゃあ、今日ここに入学できるよう、ここの学院長に直談判に行ってきます!」
「 ええええええェっ!」
何故だか凄い驚いている。
「す、すごいわ、祭君。 勇気があるのね。さすがね……」
「え? そうですか?」(なんだか照れ臭い……)
「ええ、すごいわ。 あの『学院長』に直談判なんて」
「えっ? あ、あの、学院長?」
キョトンとする俺に、彼女もキョトンと。
「え? もの凄く有名な話しだから、まったく知らない訳じゃないでしょ?」
隣にいる凛さんは眉をひそめ、樹さんの制服の袖を引っ張った。
「で、でも樹ちゃん、あの話しって本当かな? 学院長が何万年も生きている【不老不死】だって」
「ふ、【不老不死】ッ!」
驚愕する俺に、樹さんは真面目な顔を向けた。
「この学院はね、50年以上前まで大東京タワーといわれる場所だったの。 扉も開かず、塔も壊せず、ただ存在するだけの塔だったの。 人間の歴史より前からあると言われているわ。 そして学院長は、扉が開く前から この塔の中で生き続けていたって話しなのよ」
血の気がサァ――と引くのを感じた。
「い、生き続けていたって、そんなことありえるのでしょうか、樹さん?」
「東京魔女学院 学院長、メフィス・クローディア。 彼女はいまでは先生職をやめて、卒業生の魔女に譲っているけど、彼女が50年前からここで魔法を教えていたのは、東京に住んでいる人なら誰もが知っている周知の事実よ。 だからみんなこぞって噂したわ。 学院長は不老不死じゃないかって。 実はこの塔に封印されている化け物で、人間を堕落させるため、魔法という禁断の果実を持ってきたんじゃないかってね、色々と」
全身がぶるっと震え出す。
「この塔は人間が存在する前からあった訳だし、もしかしたらここを作ったのも彼女で、ずっとこの中で生き続けていたのかもしれないわね。 授業は先生だけだし、樹もまだちゃんと見たことがないから確信はないのだけど……」
「い、樹ちゃん……」
「えっ?」
藍原 凛の呼びかけで気づく。
黒羊 祭の 青ざめた表情に。
「ま、祭君……大丈夫?」
「へっ?」
いつのまにか心配そうに 俺の顔をのぞき込んでいた。
「顔、青いわよ? いまの話し、ほんの少しも知らなかったの?」
申し訳なさそうにする彼女に、あわてて両手を振りたくる。
「し、知ってました、知ってましたよぉ! あ、あたりまえじゃないですかっ、あはははははっ!」
うつむいてショボーンとしてしまう。
「ごめんなさい。まったく知らなかったみたいだね。 樹のせいで怖がらせちゃったね」
嘘はバレバレだったらしい。恥ずかしい。
「いえ、へっちゃらです。 歴史上初の、男が魔女を目指すんですから。 倒してみせますよ、学院長をっ!」
拳を突き出し宣言すると、あわてふためいた。
「ま、祭君、祭君っ! 倒しちゃダメよ、学院長なんだから!」
「あっ! そうでした……しまった……」
情けないことに かなり動揺してしまっているらしい。恥ずかしい。
(不老不死……化け物……そんな相手に直談判……)
相対する相手を想像して手に汗がにじみ出す。
だが、交渉する上で相手を知らないより、知っていた方が交渉が有利になるのはたしか。
強敵だとわかっていれば、それだけ準備や気合の入れ方も違ってくるのだから。
「祭君……」
不安を抱えて震える俺の右手を、樹さんが優しく握りしめる。
「い、樹ちゃん……まさか……?」
そして俺の右手を開き、手のひらに 人差し指で【人】の字を書くと――
「なッ!」 ( 舐めたあああああああああぁぁぁ――――――――っ! )
衝撃的な行動により俺の頭の中は真っ白になり、学院長への恐怖などのすべての感情が吹き飛んだ。
茫然と立ちつくす俺に、ゆるやかに微笑みかける。
「お母さんがね、よくやってくれたの。 樹にこうやって手のひらに人の字を書いて、舐めて緊張をほぐす おまじないを」
(い、樹ちゃん……。 それは自分の手に書いて、自分で舐めるものだからね。 私もやってもらったときは超嬉しかったけど)
真っ赤になりながら、舐められた手のひらをじっと見た。
(お、女の子に、初めて手のひらを舐められた……)
「い、樹ちゃんっ、汚いよぉ、舐めたら!」
「あっ! そうね、凛。 ごめんなさい、祭君。 いきなり手を舐めちゃって、 汚かったでしょ?」
「違う! そうじゃなくてェ! はいっ、樹ちゃん!」
ハンカチを手渡すと、すぐさまに――
「ありがとう、凛。 はい、コレ。 使って【祭君】」
「違う! 樹ちゃんが使うんだよ!」
「えっ? 樹が? なんで?」
意味が分からずキョトンとしている。
真っ赤になりながら。
「あ、あの……い、いいですから……。お、俺、全然気にしてませんからぁ……」 (嘘ですゥ! メチャメチャ気にしていますゥ!)
強がりに気づいたのか、樹さんは苦笑する。
「そう。ごめんなさいね。 あなたが死んだお母さんに似ていたから、ついね」
(お母さんに? それは容姿なのだろうか? それとも雰囲気?)
「いえ、樹さん。俺、勇気がでました! 頑張ります!」
半分強がりで言ったが、「よかった……」と安堵する姿に心が軽くなる。
「樹ちゃん、そろそろ授業が始まっちゃうよ」
「そうね、凛。 ごめんなさいね、祭君。 こんなところで長々と立ち話しちゃって。 じゃあ、樹たちは行くね。 扉は開けておくから、学院長への直談判がんばって」
「はい!」
微笑んだあと樹さんは、閉じた巨大な扉の前に行き、手でスっと触れると、100メートル以上ある開かずの扉が音もなく開いた。
あまりにもの静けさに、いままでずっと開いていたかのように錯覚させた。
「2、3分もすれば勝手に閉まるから、それまでに入ってね」
「わかりました」
「教室でまた会いましょうね、祭君」
にこやかに手を振って学院内に入っていった。
2人を見送ったあと「ふぅー」と息を吐き、気合いを入れるため、両頬を強く叩く。
「よしっ! いくぞっ!」
眼前にある1万メートルの白い塔を見上げて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
(たしか、扉が開いた先にも見えない扉があって、それは魔力があれば通れるはず。 俺はもう魔法は使えるわけだから通れるに決まってるけど……少し不安だな……でも……)
そんな不安な思いより、俺の心には渦巻く想いがあった。
それは――【夢への渇望】
「とうとう ここから始まるんだ……。俺の魔女への第一歩が……」
うっすらとつぶやき、決意と期待を胸に、学院内に足を一歩踏み入れる。
《 ビィ―――――――ビィ―――――――ビィ――――――― 》
踏み入れると同時に 警報音が鳴り響き、機械的音声が流れる。
《侵入者! 侵入者! 侵入者! タダチニ コノ塔カラデナサイ!》
「 ええええええッ! 一歩目からこれェッ! 」
《引キ帰シナサイ!》
引き返せるか! その想いで さらに一歩 踏み込むと――
《告ヲムシ。迎撃ニ移ル!》
周りの壁からにょきにょきと、石でできたバケモノ、いわゆるゴーレムと呼ばれるヤツが数十体 姿を現わした。
愕然として言葉を失った。
「あっ、あっ、あっ」(こ、こんなトラップまであるのか、この学院は……! 樹さんもこのことは言ってなかったし、知らなかったんだろう。 知っていたなら、彼女なら絶対教えていたはず……)
数十体のゴーレムに取り囲まれて身構える。
(くっ、こんなところで引けるか! 今日、ここに入学するって決めたんだ。こんなところで引き返している暇なんてない! つき進め! 歩みを止めるな! このまま学院長のところまで突っきる!)
覚悟を決めて、持っていたバックを放り投げ、ゴーレムたちに追われながら学院内を突き進む。
こうして俺は、男子初の【魔女学院】への侵入を遂げるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます