鬼神編

2

 僕には4つ上の姉がいる。

弟の僕が言うのなんだけど姉は『出来る』人だった。

勉強もできて運動もできる。

その上コミュ力もあり,中学では生徒会長を務めていたらしい。

そんな姉は去年,No. 1戦者シーカーになり,日本でトップクラスの戦者団体である『イブリーフ』に入団した。

戦者とはこの世界に出てくる異物ケテルを討伐する人たちのことを指す。

昔よく姉と戦者の真似をして遊んでいた記憶がある。

そしていつしか僕はそんな姉に憧れを持つようになっていた。

才能のあった姉に少しでも追いつけるよう,必死に努力した。

その結果,姉も通っていた戦者育成学校の『エンブレイム学園』に入学することができた。

そして今日はその入学式だ。

入学式を終えて教室で本を読んでいると先生が入ってきた。

女性は教卓の前に立って自己紹介を始めた。


「みなさんこんにちは。今日からこのクラスを担当することになりました天野あまの美琴みことです。知っている人もいるかもしれないけど階級は【神】,世界ランクは18位です。よろしくお願いします。」


『まじか,まさかとは思っていたけど本物だったんだ。』


現代に疎い僕でもこの人は知っている。21歳にして最上級の階級である【神】にまで上り詰め,No.18でもある天野美琴さん。

誰もが憧れる『戦者』の1人だ。

彼女の挨拶が終わると,次はクラスメイトの自己紹介になった。

全員階級は【乙】あたりで意外と低いのだなと思ってしまう。

そんな中1人の男子生徒が立ち上がると空気が変わった。


「僕の名前はエムレット・煌です。階級は【奏】。よろしくお願いします。」


彼がお辞儀をすると女子から黄色い歓声があがる。


『陽だ…。』


関わらないようにしようと心に決めたのであった。



 クラス内での自己紹介を終えた後,それぞれ2人組で戦力検査を行うことになった。

殺す以外ならなんでもオッケーの模擬戦だ。

ペアを決めるためのくじを引く。

引いた紙に書かれていた文字は『余り』だった。

これは先生との対戦を意味する。


『嘘でしょ。』


手加減はしてくれるにしろ先生はNo.18だ。

勝てるわけがない。

しかも先生の都合上,順番は1番最後になってしまった。

他の人たちは案外拮抗していて長く続くのかなと期待していたが体力がないのか10分程度で勝負がついていた。

そして僕の番が回ってくる。


「はじめ!」


その言葉を合図に僕は走り出した。

手には黒い刀を持っている。

僕の家に伝わる阿修羅と御仏のうちの阿修羅だ。

御仏は姉が持っている。

刀を振るう。

狙いは首だ。


「早いですけどまだまだですね。」


先生はそう言って僕の攻撃を刀で跳ね返す。

そして先生は僕の胴に向けて一閃。

勝負はついた。


「『河童』。」


「!!」


『なーんてね?』


お互いの間に滝よりも強い激流が流れる。

先生は反応できたが明らかに困惑している。

僕の刀に対してだろう。

僕の阿修羅はそこら辺のボロ刀とは違う。

妖刀だ。

その能力を僕は体に宿している。


「やはりあなたは光希の弟ですか。」


光希とは僕の姉の名前だ。

姉がここに通っていた時にこの人と仲が良かったのは僕も聞いていた。


「やはり光希の言っていたとおりです。なら手加減はいりませんね。」


「むしろされると困ります。死にますよ。」


僕の阿修羅は姉の御仏と違って手加減ができない。

つまり相手は本気の百鬼夜行と戦う必要があるのだ。

たとえ,それが先生だとしても例外ではない。

姉だけは例外だけどね…。


「僕からいきますよ!」


さっきよりもはるかに速い速度で攻撃を仕掛ける。

先生はスキルを解放して僕を迎え撃った。


「陽逆!」


カウンターを仕掛けてくる。


「『雷鬼』。」


僕の背後から雷を纏った腕が僕の周りを薙ぎ払う。

先生はギリギリでそれを避ける。

その後もお互いに数千もの攻撃を仕掛けた。

戦いにひと段落つくと,先生の纏う神気オーラが増加した。


「私のスキルは『ミコト』。あらゆる物の命を…」


『スキルの開示か!』


先生がそこまで言ったところで1人の男性が彼女を気絶させた。


「全く,少しは自重をして欲しいものです。」


禍々しい神気を放つツノの生えた男。

No.2。

名を『シャドウ・レイン』と言う。

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I think of you as my hair dances under the cherry blossom tree. ぞーすい @zo_sui

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