第25話 正義は強者の理屈……③
緊急連絡機能……
アリス・ドアに内蔵される機構の一つ。
VR世界への完全没入が
だが、この弊害に対する対処は容易である。単純に外部からの呼び掛けをVR世界へ表示すればいい。
アリスドア本体の規格に合致する機器ならリンクを登録さえすれば、電話、メール、SNSなどのチャット機能も容易に表示可能であり、その他にもリンク出来る機能は多岐に渡る。
勿論……妹の体調をモニターする機器からの信号もリンク可能だ。そしてその機器が表示する内容が……
(連絡自体はじいちゃんにも送られているはずだし、それほど慌てる状況じゃない……が、のんびりゲームしてる場合でもなさそうだ)
この場で即ログアウト……それも出来ない事は無い。
本来、このゲームはアバターがどこに居ようとログアウト自体は可能だ。
ただし、ログインはその直前にセーブしたポイントから始まる。
そしてログアウト禁止エリアで強制ログアウトをすると、アバターが保持する全てのアイテムとポイントがその場に散逸する。
つまり……デスペナルティと同様の措置が課せられるのだ。
(とはいえ……こんな三下相手に
じいちゃんはゲームの事など
何しろあの爺さん……武道家や戦闘を生業とする人材への顔だけはやたら広いのだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「俺に拳銃が効かないってのは分かったか? ……って事で、大人しく帰って欲しけりゃこれ以上余計な真似すんなよ? 俺は面倒な事は嫌いだが……
雨あられと弾丸を撃ち込まれた筈の俺が無傷だった事に驚いたのか……魔術師のオッサンは口を真ん丸に開けて立ちすくんでいる。
その隣では、編み上げニットに丸いサングラスの暗殺者がニヤつきながらタクティカルジャケットのポケットを開けて小瓶ををあおった。(酒っぽいムーブかましてるがそれポーションだよな?)
そして……
ツルリとした鏡面マスクの眼球部分にクナイを突き立てたまま、プルプルと震えるていた爆弾女だけが……
すぐさまリアクションをとった。
女は、大口径拳銃特有の丸太みたいなグリップを器用に操り、トリガーの隣にあるボタンを押し込んで、
そのまま両手を腰に向かって振り抜くと……バナナの房みたいに腰からぶら下がるマガジンを器用に装填し、即座にこちらへと向ける。
あまりにも素早いリロード。まるで映画のワンシーンの様な見事なアクション……だが当然、
ヤツがリロードする間に間合いを詰めるべく俺は走った。リロード完了時の彼我の間合いは……5メートルってとこだな。
命中精度の低い拳銃でも十分当たる距離……しかも
だが……
「まる見えなんだよ!」
ヤツがトリガーを引き絞る指の動きと
そんな適当な弾に当たってやるほど俺はお人好しじゃない。
そもそも当たらない弾は無視し、着弾する軌道の弾は最低限の動きで回避する。
ふふ……ヤツらが驚いている。まあ、傍から見たら弾丸を避けたみたいに見えるだろうからな。
この間合いで弾丸を避けた事に、流石のトリガーハッピーな爆弾女も驚いたらしく思わず連射を止めたが……
「どうしたよ……もう終わりか? なら警告を無視した自分がどうなるか分かってるんだろうな?」
俺は威圧と共に更に間合いを詰めた。
挑発に反応してトリガーに力を込める爆弾女。銃口の向きは……俺の脳幹と鳩尾。いわゆるコロラド撃ちと言う奴だ。
頭を狙う弾丸はタイミングを合わせればまだ回避可能……だが、身体の中心線を狙う弾丸は、流石に回避しきれない。
普通なら。
- ギギギンッ -
「無駄だって言ってんだろ?」
スキルを起動し、身体を狙う弾道上に複数のクナイを生成。拳銃としては破格のエネルギーを内包する弾丸を多段的に受ける事で着弾軌道から弾き飛ばした。
そのまま間合いを詰め爆弾女に肉薄。銃口を向けるには間に合わないと判断したのか巨大な拳銃を鈍器代わりに俺への殴打を敢行するが……そんな悪あがきは俺には通用しない。
- ガッ -
「Guagaa!!」
俺の振るう木刀の一撃がマスクに突き立ったままのクナイに命中。ギリギリで止まっていたであろうクナイが確実に眼球を貫く位置まで押し込まれた。
痛みは無くとも視界を奪われたのは流石に堪らなかったのか……女は片方の拳銃を投げ捨てマスクに刺さったクナイを抜き取ろうと手を伸ばした。
「そいつは悪手だな」
慌てていたのだろう。
抜き取ろうと伸ばした手は残った視界を更に削る結果となる。
俺は当然そんな隙を見逃しはしない。女が反応しづらい死角からクナイを掴んだ手へダメ押しの掌底を叩き込む。
「………Gaッ?」
位置的に眼球を傷つけていただけで止まっていたクナイが、完全に脳を傷つける位置まで押し込まれた結果……
- ザラザラザラザラザラザラザラ -
ギルドフロアを殺戮の渦に叩き込んだ女は……アイテムとコインの山を遺して消えた。
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フロアに巨大な爆弾を放り込み、ギルドのメンバーを殺しまくったテロリスト女がよく分からないアイテムとコインの山に変わった直後。
……それまで何もせずに事の成り行きを見守ってきた暗殺者の男がスッと前に出てきた。
「ほとんどノーダメでダムをヤッちまうとは……バケモンみたいな身体能力してやがんなお前。さては……さっきの俺との立ち回りも手を抜いてやがったな?」
「いきなり現れた正体不明の暴漢に……手の内全部晒すわけねーだろ」
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