新たな仲間
第35話 たわわに実った
「あれは、建物ですの?」
森を歩いていると植物に侵食されたような建物が見えた。
「今度こそトロワ村か?」
アクリョーは高く飛び上がり建物の先を確認した。
「村じゃなそうだぞ!町だ!
それもヨウニーとかヒコウよりもデカい町だぞ!」
長く人と会っていなかったキリエの足取りが軽やかになった。
「流石にここには誰も住んでなさそうですわね。」
「そうだな。町の中心の方にしか人がいないのかもな。
もう潰れた郊外の農家って感じかな。」
建物のすぐ近くには別の建物はなかった。
森に侵食されてはいるが壊れた柵のようなものはあちこちに見受けられた。
「そうですわね。早く町の中まで行きますわよ。」
「あっ、ちょっと待てよ。」
柵に囲われた畑だったであろう場所に何かがあることにアクリョーは気づいた。
アクリョーはそれに近づいていく。
「お、やっぱり!
これメロンじゃないか!?
きっと美味いぜ!収穫してけよ。」
アクリョーが飛んで行った先には地面に足をつけるほどたわわに実ったメロンのような果実と、その隣にも少し小ぶりな果実がなっていた。
「人の土地のものなんじゃないですの?
また知らない植物を採ろうとして厄介な目に会うのはごめんですわよ。」
「この家はもう放棄されてるだろ?
畑だって荒れ放題だし。
こんな立派なメロン、誰にも食べられない方が可哀想だって。」
そう言ってアクリョー大きなメロンに手を置きキリエを説得した。
モコモコモコ ガブッ
それはあっという間の出来事だった。
メロンの近くの土が盛り上がり地面から大きな口のような植物がアクリョーを飲み込んだ。
「アクリョー!!」
アクリョーが食べられた。
いや、そんなはずはない。
アクリョーはなんだってすり抜けるはずだ。
地面だってすり抜けるし魔法だってすり抜ける。
魔物になんて視えるはずが、食べられるはずがないのだ。
キリエは混乱していた。
モグモグモグモグ
さっきまで小ぶりだったメロンが隣のメロンと同じくらいに、大きなメロンもさっきよりわずかに大きく成長していっている。
モグモグモグ...ペェッ
植物はキリエの足元に何かを吐き出した。
キリエは我に帰った。
足元には少し薄くなったアクリョーが倒れていた。
「アクリョー!!」
ズボボボボ...
パンッパンッパンッ
キリエがアクリョーを心配しているとメロンのあった地面から何かが現れた。
それは立ち上がり体についた土を払っているようだ。
キリエがそちらに目線をやるとそこにいたのは少女だった。
キリエよりも遥かに幼く小さい。
いや、遥かに大きい、たわわに実った果実を2つぶら下げた少女がいたのだ。
「魔物ですの...?」
土を払い終えると少女はキリエに向かって走り出した。
「っ...アイスブラスト!」
キリエは小さな氷の塊を放った。
パクッ
少女は大きく口を開けそれを頬張ってしまった。
少女は氷を咀嚼しながらキリエに近づいてくる。
(速いっ)
キリエが次の魔法放つよりも早く少女が目の前に来ていた。
少女はキリエにピタリとくっつき、腕なのか
「キリエ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます