第24話 到着
「そろそろヒコウの町が見えてきてもおかしくないはずですわ。」
ペガサスを倒してから1日が経っていた。
「そうなのか?よくわかるな。」
「ええ。ペガサスはヒコウの町の周辺に多く生息していると本に書いてありましたもの。」
アクリョーは限界まで高く飛び上がって辺りを見渡した。
「お、ほんとだ!見えたぞ!
もう少し先だが町っぽいのがあるな。」
それを聞いたキリエの足取りはさっきよりも軽くなっていた。
_______
「やっと到着ですわ。」
町に入ろうとするキリエは入り口に立つ門番に止められた。
「通行証はお持ちですか?」
「え、えーと。持ってないですわ。」
「では通行料をお支払いください。
孔銀貨4枚になります。」
この世界には紙幣というものはないらしく、5種類の硬貨で取引が行われる。
1番安いのが孔銅貨と呼ばれる穴の開いた銅貨である。
次が銅貨でその価値は孔銅貨の約10倍。
ヨウニーの町ではいちご1パックが銅貨10枚ほどで売られていた。
次に価値が高いのは孔銀貨であり銅貨の約50倍。
その次が銀貨で孔銀貨の約100倍。
最後が白黄金貨で銀貨の約500倍の価値となる。
そんなわかりづらい硬貨だけでよくやりとりできるなとアクリョーは感心、いや呆れていた。
キリエは孔銀貨4枚を支払い町へ入って行った。
「まずは宿を見つけたいですわね。」
「そうだな。ここまでずっと歩きっぱなしだったもんな。」
町を歩いているとすぐに宿屋は見つかった。
「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」
「そうですわ。とりあえず2日ほど。
もしかしたらもっと長居するかもですけれど。」
「かしこまりました。
それでは料金は2日分を前払いで、それ以上は後からお支払いいただきます。」
キリエはお金を支払うと店主へ質問した。
「この宿は食事もとれたりしますの?」
「ええ。とれますよ。
1階は食事処になっていますから。」
「それじゃあ何か食べたいですわね。
歩き疲れてお腹もぺこぺこですわ。」
「今、ですか。」
店主は少し考え込んだ。
「そうですねぇ。作り置きのうま煮くらいならお出しできますけど...」
キリエがここに着いたのはお昼を少し過ぎた頃、15時くらいの時間だった。
お昼の時間も過ぎ夕食にも早いこの時間に料理の準備はしていなかったのだ。
「うま煮ですの?」
「ええ。この町の名物ペガサスを使ったうま煮です。
うちでも人気のメニューなんですよ。」
「馬のうま煮かうまいのかな。」
「じゃあそれをいただくことにしますわ。」
「かしこまりました。すぐにお持ちしますので好きなところにお座りになっていてください。」
キリエは1番近くのテーブルの1番近い椅子に座った。
そしてそのままテーブルに突っ伏した。
少しすると店主が戻ってきた。
「お待たせしました。」
キリエはガバッと起き上がりうま煮が置かれるのを眺めた。
「うふふ。お疲れなんですね。
たっぷり召し上がってくださいね。」
そう言って大盛りのうま煮を残し店主は受付へ戻って行った。
キリエはあっという間にうま煮を平らげた。
「ごちそうさまですわ!」
食べ終わるとすぐに2階の宿泊する部屋まで駆け上がった。
部屋に入るやいなや荷物を放り投げキリエはベッドに飛び込んだ。
「お行儀の悪いお嬢様だな。」
アクリョーが話しかけた時には、もうすでにキリエは眠っていた。
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