第12話 精霊術
ハバキが正式に先生となり1ヶ月が経った。
「いつになったら精霊術が上達するんですの!!」
キリエは毎日特訓を続けているが一向に上達する気配がない。
「えーと...
前に話した通り、精霊術は毎日続けることである日急に上達するものなんですよ。
...たぶん。」
「なんですの、それ!
それならあなたがいる意味はないですわよね!」
痛いところをつかれたハバキは慌てて話を変えた。
「と、ところでキリエさま!
以前箒で空を飛ぶ魔術はないと言いましたよね?」
「だからなんですの!?
今は精霊術の上達方法を話しているんですわ!」
「魔術では出来なくても精霊術なら可能なこともあるんですよ!」
そういうと、ハバキは持っていた箒に跨り目を瞑った。
すると箒に乗ったハバキはフワリと宙に浮きキリエの周りを飛び回った。
「どうですか?
まだ2mほどしか浮けないのですが、
箒で空を飛べるんですよ!」
キリエは呆気に取られ、ただただハバキを見つめていた。
「精霊術はイメージが重要だと私は考えています。」
ハバキは箒から降り説明を続けた。
「魔術でも単純なものはイメージだけで発動できます。
ですが威力が高いものや複雑なものほど詠唱が不可欠になってくるのです。
そのため、新しい魔術が生まれることはほとんどないのですが、精霊術では枠に囚われない魔法を使うことができるのだと思います。」
「もちろん、魔術の詠唱を借りて精霊術を使うこともできます。
ですがそれは精霊術の基礎ができてから。
体外の魔力の扱いが上達してからの話なのです。」
「と、言うことで今は強い魔法を覚えるよりも、
詠唱なしでもできる簡単な魔法で魔力の扱いを学ぶことが必要なのです。」
「わ、わかりましたわ...」
キリエはなかなか成果が見えずつまらない特訓を続けることを渋々了承した。
「空を飛ぶ以外に使える魔法はないんですの?」
「それがですね...ないんですよ...」
キリエはこの人に教わっていて大丈夫か不安になった。
「あ!いえ!
魔術でもできることはそれなりにできますよ。
精霊術特有のものとなると...」
「イメージすればなんでもできるというわけではないんですよね...
今まで読んだ本でも精霊術師が使う特殊な魔法は1人1つくらいという記述が多かったです。
複数つかう人もいるにはいるみたいですが。」
「ハバキは少し浮けるだけで、魔術師と変わらないんですわね。
浮かれた魔術師ですわね。」
「そ、そう言われるとそうなのですが...
でも魔術師と違って自身の魔力を使わないので魔力切れになることはほとんど無いですよ!
あとは...もう1つ精霊術にしかない大きな特徴もあります!」
「もったいぶらずに早く教えてくださいまし。」
「はい。説明が難しいのですが。
精霊術がなぜ精霊術と呼ばれているかわかりますか?」
キリエは少し考えた。
「知らないですわ。
周りの物の魔力を借りるからとかそんなところですの?」
「半分くらいは正解です。
周りにある様々な物から魔力を借りて魔法を使うだけでなく、特定の"モノ"からのみ魔力を抽出してその"モノ"の形質を含んだ魔力を別の物に付与することもできるのです。
それが"モノ"に宿る精霊の力を借りるようだとして精霊術と名付けられた、という説があるのです。」
キリエはハバキの言うことが半分くらいしか理解できていなかった。
「魔力を借りるのと何が違うんですの?」
「そうですね。やって見せましょう。」
そう言って庭にある大きな岩のところまで移動した。
「例えばこの岩の魔力のみを借りてこの箒に付与して見ます」
ハバキは何やら集中し始めた。
付与が終わると、何も変わったようには見えない箒をキリエに手渡した。
「触ってみてください。特に穂の部分とか。
折ってみても構いませんよ?」
渡された箒は想像していたよりは少し重いようだった。
折ろうとしてみるとおよそ木とは思えない硬さで穂先ですら曲がりもしない。
「ふふふ。折れないでしょう。
木の箒なのに岩のような硬さになるんですよ。」
「それでこれは何に使えるんですの?」
「え...いろいろですよ!
いろいろ!ほら...いろいろ!!
工夫次第でいろんなことができますよ!...たぶん。、」
「さては思いついていないんですわね!?
通りでもったいぶってたんですわね。」
「い、いえ!そんなことないですよ!
これには結構技術が要るんです!
物の魔力の制御が上達した上で特定の物だけから魔力を抽出するんですから!
キリエ様では100年立っても出来なさそうだから言わなかっただけですー!」
キリエはカチンときた。
「そのくらいすぐできますわよ!!
というかできるようにするのがあなたの仕事なんじゃなくって!!?
教え方が下手だからいつまで経っても上達できないんですわ!!」
ハバキは謝り続けなんとかキリエをなだめて特訓を再開した。
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