第46話 薫と両親の話し合い

★side:山崎真


「誰からもらったんだ?」


 薫がああいうのを身に着けるのはたぶん初めてだったと思う。

 大切って言ってたけど……弘識さんでも南川さんでもないんだったら誰なんだ?


「でも薫にはやっぱり似合わないよな」


 薫にはネックレスだけじゃなくてそう言った装飾品自体似合わない。

 なんて言うかこう……無理して着けているって感じがする。

 

「てか誰に貰ったかくらい教えてくれても良くないか?」


 わざわざあんな言い方をする意味が分からない。

 薫にあんなものをプレゼントするくらいだからセンスは全くないが一体誰なんだろうか?

 俺に言えないって事は……まさか男子……な訳はないよな。

 大体薫は仲のいい男子が居ないし仮に男子からもらったとしても大切なんて表現はしないだろう。


「まぁ、良いか……あの二人じゃないならどうせ家族しかいないだろう」


 薫は昔から家族が大好きだしな。大切って言うならそれ以外ない。


「ていうか薫って去年まで毎年キャンプを楽しみにしてたのにな……」


 まさか薫の方からあんなことを言ってくるとは思っても居なかった。

 確かに俺としては毎年行きたくないと思っていたので助かるんだけど……ちょっと驚いたな。

 俺は毎年親にめんどくさいから行きたくないって言っていたけど、ダメって聞かないから仕方なく行ってたんだが、今年は薫も同じ意見って事だから大丈夫だろう。

 俺の親も薫がいるんだから俺もいかないとだめって感じだったしな。

 

「ていうかやっぱり薫って凄く変わったな……」


 前と比べて明らかに表情が明るくなったのはそうだけど、今の薫には自信を感じる。

 弘識さんが凄く元気で自分に自信を持っているタイプだからその影響なんだろうな。


 弘識さんと南川さんと仲が良くなってるのは分かるけどやっぱり俺と一緒に居る時間が余りにも少なすぎる。なんだったら学校で話す以外は一緒に居ないしな。

 登下校も一緒じゃなくなったし……最近は女子だけで帰ってるって言ってるけどそんなに女子だけの時間が大事なのだろうか?遊びに行こうと言った時もそう言って断られたしな。俺が混ざっても問題はないと思うのだが?


「まぁ、取り敢えず今は父さんと母さんに俺たちはキャンプは行かないって言いに行くか」


 その代わりに日曜日は薫と遊ぼと思ったんだけどな……

 薫の代わりに弘識さんでも誘って見ようかな……一応LUNEは交換してあるから。

 でも今まで一緒に帰った事はあっても遊んだことはないよな……大丈夫かな?

 南川さんはLUNEを交換できてないしな。まぁ、クラスのグループからも追加は出来るけど流石にそれはちょっとな。


 俺はそう思いつつも父さんと母さんの所に向かった。



★side:笹内薫


「はぁー」


 私は自分の部屋に戻って深くため息をついた。

 

「あんなこと言わなくても良いじゃん……」

 

 別に似合ってないと思われる事自体は人によって感性は違うから問題はない。

 でもそれをいちいち言う必要はないと思う。

 それにもし自分で買った物だったらそこまで何も思わなかったかも知れない。

 でもこれは海斗君が買ってくれたもので似合っているって言ってくれた物だ……それを面と向かって似合っていないから着けない方が良い!そんな事を言われたら流石に凄く嫌な気持ちになった。それになんだか海斗君を馬鹿にされたように気分になっちゃったしね。


「まぁ、それはそうとして二人が帰ってきたらちゃんと話さないとな」


 キャンプの事もそうだけど海斗君と付き合っているって事もね。


 ――それから暫くして私はお母さんとお父さんと向かい合って座っていた。


「それで話ってなんだ?」

「そうね。どうしたの薫?」

「えっと……実はね話は二つあるんだけど……取り敢えず一つ目ね。キャンプなんだけどさ、今年からは私と真は参加しないでも大丈夫?」

「え?キャンプに行きたくなくなったの?」


 私がそう言うとお母さんがそう言って来た。


「ううん。そういうわけじゃないんだけどね……それに真も毎年行きたくなさそうにしてたでしょ?だから今年からは大人だけで行ってもらおうってさっき話してきたんだよね。」

「そうだな……まぁ、確かに真君は行きたくなさそうにはしてたな……それに大人だけでも問題はないし、二人が行きたくないんだったらそれはそれでいいとも思うぞ。実際二人が中学生になってからは基本的には俺達と薫達は別で動いてたしな」

「そうね……真君と話し合ってって事だったらそれでもいいと思うわよ。行きたくないって子たちを連れて行くわけにも行かないしね。それって真君は自分で山崎さんたちに話してるの?」

「うん。話すって言ってたよ」

「そう、分かったわ。それじゃあ私たちも後で山崎さんと話すわね」

「うん。ありがとう」


 私があっと言う間に解決していと安心していると直ぐにお父さんが言って来た。


「それで二つ目はなんだ?」

「そ、それは……」


 私がちょっと緊張して言いよどんでいるとお母さんが言った。


「どうしたの?言いに辛い事なの?」

「ううん。そうじゃないの……ただちょっと勇気がね……」


 私がそう言うと二人が不思議そうな顔をした。

 私はその後深呼吸を軽くしてから言う。


「私……実は、彼氏が出来たの」


 深呼吸を終えたら結構簡単にその言葉が出てきた。

 少し前までの私だったらこんな簡単に言えなかっただろう。

 恥ずかしいけど今では海斗君のおかげで自分に自信もついてるし勇気も出るようになっている証拠だ。 


 私がそう言うとお母さんはそこまで表情は変わっていなかったけどお父さんはむせていた。


「ど、どういう事だ!?」

「だから彼氏が出来たの!」

「それって……海斗君?」


 お母さんが突然そう聞いてきた。

 やっぱりお母さんは分かってたんだね……


「うん……分かってたの?」

「そうじゃないわよ。ただそんな感じはしていたってだけね。」

「ちょっと待った!それは本当なのか薫!?」

「本当だよ……海斗君と一緒に居ると凄く楽しいし安心するの……お父さんはあった事が無いと思うけど本当に優しくてカッコいいの」


 私はお二人に向かって真剣な表情でそう言った。


「そうね……確かに海斗君は凄く好青年って感じだったわね……塾の迎えにもずっと行って貰ってるし……薫の話的にも本当にしっかりとした子って事は分かったわ。あなたも海斗君の人柄を心配しているんだったらそれは多分大丈夫よ……それに薫が男の子をこんなに褒めるなんて初めてだしね。あなたも何度も薫から海斗君の事を聞いてたでしょ?」

「そう……だな。薫がそこまで言うんだったら大丈夫なんだろうな……」


 私は二人があっと言う間に認めた感じになったのでちょっと驚いた。

 大丈夫だとは思っていたけどもう少し大変になるかなって思っていたからだ。


「認めてくれるの?」

「認めるも何も薫が決めたなら反対する理由は無いわ」

「そうだな。俺たちは薫を信頼してるし薫が決めた人だったら文句は言わないぞ。それは前から二人でそうやって決めてたしな」

「お父さんとお母さんが?」

「あぁ。いずれはこの日が来るって事も分かってたからな。でも男性の方は想定とは違ったけどな」

「それって……真の事?」

「そうだ。薫は真君の事が好きだったと思ってたからな……」


 それは確かに間違いではない。

 ずっと一緒に居て真と仲良くしている姿を見てきた二人はそう思うのも無理はないだろう。


「まぁ、真君の話は止めましょう。昔はそうだったのかも知れないけど今は海斗君なんでしょ?」

「うん!私が好きなのは海斗君だけだよ!」


 私がそう言うとお母さんとお父さんはお互いに目を合わせて笑った。


「どうしたの二人とも?」

「いや、薫が成長したんだなって思ってな」

「成長?」

「そうよ。中学生までの薫はどこか自信がなさそうで私たちにもこんなにはっきりと物事を言う事は無かったからね」


 確かに言われてみたらそんな気がする。

 家族だから大丈夫だと思っていても、心の弱さからどこかで控えめになっていたのかもしれない。

 今思えば何かをお願いをしたこともなかった気がする……


「そうかな……」

「そうよ。それに最近笑顔が多くもなっていたしね。それも海斗君のおかげかな?」

「自分じゃ分からないけど……そうなんだとしたら海斗君のおかげだと思うよ」


 実際に海斗君と仲良くなってからはずっと楽しいしね。


「それだったら尚更俺達から言う事は無いな。俺達からしたら薫の幸せが一番だから薫がしたいようにすれば良いよ。」

「それが良いわね」

「ありがとう!お母さん!お父さん!」


 私がそう言うと少し間を開けてお母さんが言った。


「それで薫?」

「何?」

「お泊りに行ってたのって……」


 私はそれを聞いて体がびくっとなった。


「やっぱり海斗君のお家だったのね?」

「はい……」


 私の反応を見て気付いたのだろう……私は隠せないと思って素直にそう言った。


「それって!?」

「まって!」


 お父さんが何かを言おうとしていたけどお母さんがそれを止めた。


「薫?そう言うのはきちんとリスクも考えてやってるのよね?」


 流石にお泊りまでして何もしていないとは思わないよね。

 でもちゃんと避妊もしているしそれは当然だ。

 流石に子供なんて考えられる年じゃないしね。


「それは当然です!」

「そうよね……それに今の薫を見ていれば本当に海斗君の事が好きなんだって伝わって来るし……そうね。だったら大丈夫よ」

「そんな事!」

「あなた……薫はまだ高校生だけどこの顔を見ればちゃんと自覚を持って行動してるって事は伝わってくるから認めましょう。それに薫が最近楽しそうなのはあなたも分かってたでしょ?」


 お母さんがそう言うとお父さんは時間を置いて言った。


「はぁ、そうだな。分かったよ。でもちゃんとわきまえてするんだぞ?」

「うん……それじゃあお泊りは続けても大丈夫?」

「そうね……その代わり今度海斗君を家に連れて来て頂戴ね」

「分かった!」

「じゃあ、俺たちに海斗君の事を教えてくれないか?」


 それから私は海斗君の事を話した。

 どんな人でどんな事を一緒にしてきたかとか。

 頭が良くて勉強を教えて貰っていたとかをだ。


 言っても大丈夫なのかも知れないけど聞かれなかったので親が居ない事やお金持ちだって言う事は伏せておいた。

 隠す必要もないけどそれは海斗君に言っても良いのか聞いてから教えよう。

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