第45話 薫と山崎

「そろそろかな?」


 俺は何時も通り薫の塾の迎えに来ていた。

 

「お待たせ海斗君!」

「あぁ。それじゃあ帰るか」

「うん!」


 ――俺と薫は一緒に手を繋ぎながら帰っていた。


「はぁ、」


 一緒に歩いてると薫が小さくため息をついた。


「どうした?」

「ううん……昨日言ったキャンプの事なんだけどやっぱり余り気が乗らないなって思ってね……昨日寝る前とか今日の学校でも改めてそう思っちゃってたんだよね」

「そうなのか?」

「うん。私個人的にはね……海斗君も居ないし……ただお母さんとお父さんが毎年楽しみにしてるからさ……それにお父さんとお母さんって二人とも大学生の頃からキャンプが好きで出会いもキャンプだったんだよね。それも相まって楽しみにしてるんだ……」


 それは初耳だな……ゲームだと両親の話はそんなに詳しく出てなかったからな。

 確かにご両親がそこまで楽しみにしてるなら断り辛いよな……俺が薫の立場でもそう思っちゃうし。


「それってさ……薫は行きたくないんだよな?」

「そうだね……お母さんとお父さんの三人で行くなら行きたいんだけど、真が居るとね……別に真が嫌いなわけじゃないけど男の事一緒に行くなら海斗君じゃないと嫌だなって思うかな……」

「じゃあさ……俺は良く分からないけどそれって大人の四人だけでキャンプに行くって事は駄目なのか?」

「大人だけで……確かにそれはありかも……毎年バーベキュー以外の時間は基本的に大人と子供に分かれて過ごしてたし!それに今思えば真は凄くインドア派だからキャンプ自体乗り気じゃなかったし!そう考えてみると別に私たちが一緒にいく必要はないじゃん!たぶんだけど今年も真は乗り気じゃないと思うし!」


 俺がそう言うと薫は急に元気を吹き返した。


「それでも大丈夫なのか?」

「うん!たぶん大丈夫だと思う!小学生の頃から毎年行ってたからその考えは全く思いつかなかったよ!ありがとう海斗君!」


 この感じだと本当に行きたくなかったんだな……まぁ、薫の事だから母親と父親の楽しみを奪いたくないからってだけの理由で行こうとしてたんだろう。昨日の電話じゃ分からなかったけど間違いないな。

 まぁでも良かったな。俺としても山崎が居るなら行って欲しくないって気持ちはあったしな。


「薫が元気になれたようで良かったよ」

「うん!でもそう考えるとお母さん達には海斗君と付き合っている事を言った方が良いのかな?今後も真の家族とって事はあると思うし……私に彼氏が出来れば私が参加しなくても大丈夫って言ってくれると思うからね。ていうかたぶんその時は基本的に大人だけになると思うけど」

「まぁ、いずれは言わないとだしな……前は恥ずかしいから知られたくないって言ってたけどもう大丈夫なのか?」

「まだちょっと恥ずかしいけどね……流石にお母さんとお父さんだから。でも言っちゃった方が心置きなく付き合えるからさ……でも一つだけ心配があるんだよね」

「心配ってなんだ?」


 俺がそう言うと薫が言う。


「もし海斗君と付き合っている事を言っちゃったら外泊が出来なるんじゃって事だよ……流石にそれをカミングアウトすると今まで外泊が多くなった理由は勘づいちゃうと思うし……ていうかそれって凄く恥ずかしい……」


 恥ずかしいに関してはどうしようもないけど外泊に着いてはたぶん大丈夫じゃないかと思う。

 ゲームでは薫がそうしたいならってスタンスだったしな。

 ハーレムすらも許してたし。その辺はエロゲ特有のご都合展開だったんだよな。

 まぁ、俺が山崎じゃないって事だけがちょっと問題だがたぶん大丈夫だろう。

 

 そんな訳で薫の両親に対しては正直に言うと俺的には隠す必要は全くないと思っている。薫次第だ。


「ていうか俺と付き合っている事を認めて貰えないって事は無いのか?」

「それは無いかな。私って少しだけ海斗君の話をお母さんとお父さんににしてるんだ」

「そうなのか?」

「うん。それでね、海斗君が毎回優しく迎えに来てくれている事とか、海斗君がテストで満点一位だって事とか教えてるから海斗君の事は二人とも好印象だと思うよ」

「でもそれだったら既に勘づかれてるんじゃないか?目の前で俺の話をしている訳なんだろ?」

「可能性はあるかもね……でもそんなあからさまじゃないし時々だよ」

「まぁ、そこまで言ってるんだったら話しても大丈夫なんじゃないか?でもそれは薫次第かな。恥ずかしそうにもしてたし」

「でも外泊禁止されたらどうしよう……それが一番心配……折角海斗君が私の部屋まで用意してくれたのに」


 外泊か……大丈夫だと思うけどな。

 まぁ、俺はゲームの知識があるからそう思えているだけで薫からしたら心配なんだろう。

 俺としても薫が外泊禁止になったら嫌だし。


「まぁ、遅かれ早かれな訳だしバレてからじゃなくて自分から告げた方が良いかもな。もしあれだったら俺も一緒に言いに行くしな」

「ううん!とりあえず海斗君は来なくて大丈夫だよ!最初は私だけでお母さんとお父さんには伝えたいしね。それに確かにそうだね!自分から言った方がお母さん……いやたぶんお母さんは大丈夫なんだけどお父さんからしても良いよね」

「お母さんは大丈夫なのか?」

「うん!お母さんに関しては大丈夫だと思う。なんだったらさっき勘づいてるかもって言ったのお母さんだしね。お父さんは絶対に勘づいてないよ。」


 だとしたら薫のお父さん……凄く鈍感じゃないか?

 付き合っているは言い過ぎでもちょっとくらいは思う事があると思うんだが……薫が男子の話をするなんて俺が転生する前の薫だったら絶対にあり得ない事だぞ。当然山崎の事を除いてな。


「まぁ両親に話して、もし俺が行く必要があったらいつでも呼んでくれて良いからな。夜でもな」

「そうれじゃあお言葉に甘えるね!流石に呼ぶとしても昼とかだけどね!」


 ――そうして薫の家の前に来た。


「それじゃあまた明日な。」

「うん!また明日!」

「さっきも言ったけどいつでも呼んで大丈夫だからな」

「分かったよ!」



★side:笹内薫


 私は海斗君が見えなくなるまで見送っていた。


「スッキリした!」


 私は昨日海斗君に電話してお母さんとお父さんに言った後からずっと考えていた。

 私もキャンプは嫌いじゃないから家族だけで行くなら是非とも行きたいけど真と二人っきりの時間が多くなるってかんがえると余り乗り気にはなれなかった。

 真と居る時間があるんだったら私的には当然その時間は全部海斗君に費やしたい。

 それに休みの日なんてほとんど毎日海斗君と遊んでいたし私もそっちの方が100倍は楽しいしね。


 私がそんな事を考えていたら真が帰ってきた。


「お!薫!家の前で何してんだ?」

「今塾から帰って来たの」


 真に海斗君と一緒に帰って来るのを見られたら絶対に広まっちゃうので危なかったな……

 いや、その時はその時で良いかもね。もうそろそろって話にもなっていたし。


「そうか。俺も友達の家から帰って来たんだ」

「そうなんだね」

「そういえば今年もキャンプに行くんだってな……高校生になったらなくなると思ってたんだけどな……めんどくさいな」

「真は行きたくない感じかな?そう言えば毎年めんどくさいって言ってたよね」

「そうだな……キャンプに行くくらいだったら家でゲームして焼肉を食べに行った方が全然ましだな……大体蚊とか虫が多くて嫌なんだよ……」


 それだったら丁度良いかな。


「そういえば毎年お互いの親が凄く楽しみにしてる感じだったよね」

「そうだな……だからめんどくさいけどしょうがなく行ってたしな……」

「それじゃあさ。今年は私たちは行かないでも良いんじゃないかな?」

「え?」

「私も虫が多くて嫌だし真も嫌だったらそうした方が良いんじゃないかな?大人たちだけでもいつも楽しんでるしね。元々私たちと大人たちってほとんど別行動じゃん」


 キャンプ自体は嫌いじゃないけど虫だけは本当に嫌いだ。

 以前のキャンプでも虫が肩にくっついて泣きじゃくった事がある……小学生の頃だけどね……当然今でも肩にくっついたら凄く慌てる。


「でも薫は毎年……いやそれは俺としても助かるけど、本当にそれでいいのか?」

「私は大丈夫だよ」


 私がそう言うと真は少し考えた後言った。


「じゃあその日は二人でゲームでもするか?久しぶりに俺の家でさ!そういえば高校生になってから俺の家で遊んでないしさ!」

「流石に高校生にまでなって家で男女二人っきりはダメだよ……」


 当然海斗君とは何度も二人っきりになっているのでそんな事は思っていないけど単純に断るためだ。大体海斗君以外の男子の家には行きたくない。


「意外だな……」

「え?意外って何が?」

「いや……薫がそんな事を気にするんだって思ってな。でも大丈夫だろ幼馴染なんだし」


 これに関しては幼馴染は関係ないと思うんだけど……ていうか気にしない訳ないでしょう……何を言ってるんだろう。


「全然大丈夫じゃないよ」

「そうか……それじゃあ二人でゲームセンターにでも行こうか」

「え?ゲームセンター?」

「問題あったか?」


 ていうか真の中ではもはや日曜日は私と一緒にいる前提なんだ……


「えっと、日曜日は一日中家でゆっくりしたいなって思ってたんだけど」

「じゃあ俺も薫の家に行こうかな……久しぶりだし」


 さっきの話はもう忘れたのかな?一緒に家に居るのは駄目って言ったのに……

 真ってこんなに話が通じなかったっけ?ちょっとめんどくさくなった来ちゃったよ……


「だからそれは駄目だって……二人っきりで家はさ……」

「それもダメなのか?」

「うん。ダメ。彼氏でもないのに家に男子を入れるなんて事はしないよ。もちろん行く事もないよ」


 私がそう言うと真は一息置いてから言った。


「かれ……彼氏と言えば、薫って彼氏を作りたいとか思ってるのか?」

「え?」

「いや……最近告白されてるって来たからさ……どうなのかなって……これから彼氏を作るのかなって……幼馴染なんだから教えてくれよ」


 確かに告白はされているけどきららちゃんと仁美ちゃんが追い払ってくれてるんだよね。それと二人がいない時も一回だけあったけど考えるまでもなく断っている。

 カッコいいって言われている先輩も居たけど私からしたらどこがカッコいいのかが分からない。海斗君と比べたら他の人は皆同じくらいに感じるし……

 

「これから彼氏を作る気なんて全くもってないよ」


 そんな事は当たり前だ。

 海斗君とは既に付き合っている訳だしこれから彼氏を作る気なんて一ミリもない。 

 海斗君とは絶対に別れたくないしね。


「そっか。まぁ、薫に彼氏が出来る訳ないよな……ていうかそれってなんだ?」


 ちょっと言い方がなって思うけどまぁ、良いかな……


「それって?」

「その首に着けているやつだよ」


 真が言っているのは海斗君が前に買ってくれた可愛いネックレスだった。

 私は凄く嬉しかったので学校以外で外出する時は常につけている。

 学校でつけるのは駄目だけど持って行って下校した時に着けるのは大丈夫だ。


「これはネックレスだよ。大切なの」

「ふーん……誰かに貰ったのか?」

「そうだね」

「弘識さんか南川さんか?」

「違うけど……真には関係ないよ」


 私がそう言うと真はちょっと怒った様子で言って来た。


「まぁ、どうでも良いけど全然似合ってないから止めた方が良いぞ?チャラチャラしてると思われるぞ?」


 私はそれを聞いて凄く嫌な気分になった。

 似合っていない……海斗君が私に似合っていると言って買ってくれたネックレスなのに。

 大体大切なネックレスって言っているのにその言い方はあり得ない。

 絶対にそんな事は無いけどもし仮に似合っていなかったとしても絶対に言っちゃいけない事だ。

 私はそう思いながらも久しぶりにイラっと来ていたけどそっとその気持ちを鎮めた。


「もういいよね?私帰るね?とにかく日曜日は私たちは行かないって事で親に伝えるからそっちもお願いね」

「え?あ、あぁ、そうだな。ちゃんと言っておくけど……」


 私はそれだけ言って家に入った。

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