恋は星空のよう
恋はあまりにも私の考える範疇では、星空のような綺麗なものであり、手を伸ばしても届かないものであるように思う。実際恋愛経験なんてしたことないし、これからも難しいであろう。私自身の恋愛対象が女性という事実が私の足を引っ張っている。
だからこそ、お遊びなら少しだけ、彼女と恋人ごっこするのは、悪くない提案だろうと思えた。
だって、私が住んでいる東京へ帰るのももう少しだ。私が澪に情が湧くまでには帰れるだろう。その間に夏祭り等の行事はあるし、十分恋人らしいことを享受できる。そう甘く考えていた。
私が東京へ帰るまで、後5日。その時間だけの恋人ごっこが、私の人生の岐路を大きく変えるなんて、知る由もない。
崩れかけている鳥居への石道を歩く。時刻は12時半を指しており、昼ご飯時といったところだ。
この時間を選んだのは極めて単純な理由がある。澪と二人でごはんを食べるためだ。私の右手には二つの弁当袋、片方は澪への弁当だ。兎の模様が入っているピンク色の袋で、彼女にぴったりだろう。そう、今日の作戦は題して「一緒にご飯を食べてラブラブになっちゃおう大作戦」だ。名前は澪がつけた。単純すぎて割と私はこの名前を気に入ってる。
「遥!来たのね!」数十段はあった石道を抜け、扁額が崩れボロボロになっている鳥居を抜けると、澪がその青空のような髪を揺らしながら、無邪気な笑顔で私のことを迎え入れる。先日のように濡縁へ座っていた。ほんとに子供みたい、可愛い。
「うん、ごはん持ってきたよ。一緒に食べよっか」
私は微笑み、澪の分の弁当箱を彼女に渡す。彼女は目を輝かせながら私の作った弁当を見ていた。そこまで期待しているなら作った甲斐もあったものだ、ちょっと献立どうしようか迷ったのは秘密だ。
「遥!素敵!」
彼女はスルッと弁当袋の紐を外し、普通のより一回り小さい弁当箱を涎を垂らしながら開ける。中身を見た彼女は更に目を輝かせ、箸袋に入っている割り箸を手に取る。
中身は、唐揚げや卵焼き、ブロッコリーにトマト...といった、普通のものを詰め込んだ。だって、彼女は私が苦手なものを聞いたとき「なんでもいいよ!遥のならなんでも嬉しいし!」とうれしいことをいってくれたから、とりあえず普通のを作ってみた。
というか、澪って私に対して好感度高すぎじゃないだろうか?。
「もう食べていい?!」
期待感を乗せた声で、彼女はそう私に言う。嬉しいけど、それほどまで喜ぶものだろうか?。
目を輝かせ、足をバタバタさせながら、私の返答を待っている彼女の様子からは、どれほどまでワクワクしているのかが察せれた。
「うん、勿論」
私は嬉々とした声でそう返答し、私の分の弁当箱を隣に置く。
まずは感想を聞きたい、初めて作ってみたから心配だ。
「いただきまーす!」と言い、彼女は不器用そうに割りばしで、おかずを食べながら、時折思い出したかのように米を頬張っている。
可愛い。なんというか、子供のような愛くるしい感じがする。
「美味しい!遥ってお料理が上手なのね!」
嬉しそうな声色でそう呟く。美味しかったのか...よかった。
ホッと一息つくと、私も隣に置いてあった弁当袋の紐を外し、弁当を開ける。澪のと変わらない、普通のお弁当だ。
でも、何故だか彼女と食べると心が普段よりあったまるような気がする。
この気持ちは、果たして親愛と呼べるのだろうか?という疑問を考えながら、私は少し甘い卵焼きを頬張った。
太陽が雲の中から体を出し、私達の照らしていた。これはまるで、答え合わせのようにタイミングが物語っていた。
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この感情の名前を私はまだ知らない 七瀬りんね @darapuras
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