株式会社ソルジャー
楠木祐
第1話
東京のオフィス街にある高層ビルの一室、そこが橋本海斗が入社する株式会社ソルジャーの本社だった。
アットホームで楽しい職場、そんな最近のブラック会社でも出さない広告を出していたこの会社だがそんなものを吹き飛ばすほどに給料が高いので入社を決めた。
正社員とは言え、嫌なら辞めれば良い。Z世代の考えと思われるかもしれないが仕事に命をかける必要はない。
従業員数は海斗を入れて5人と少ないが仕事内容はかなり少ない。
適当な事務作業と部屋内の清掃。これだけである。
それにも関わらず月給30万円。裏しかないのはわかるがどんな裏なのか、好奇心に海斗は負けてしまった。
社長に促されて挨拶を終えて、自分のデスクに案内される。
机の上には海斗専用のパソコンが一台置かれていた。
「まあ、ほとんど使わないとは思うけど社会人として見せるにはパソコンは必須だからね」
社会人のように見せるって、どんな表現だよと海斗は思ったが面倒な社員だとは思われたくないのでスルーする。
「聞きたいことがあったら何でも聞いてね」
優しい上司に簡単な仕事。この世にこんな仕事があって良いのかと思うが社長のデスクの上に掲げられた紙に目がいった。
『命はお国の為に』
この一文で海斗は悟った。
デスクの椅子に座って、海斗はデスクの引き出しに当たり前のようにあった辞表を丁寧に書き始める。
書き終えて、社長に提出すると笑って
「まあ、もうすぐ戦争だからね」と言った。
株式会社ソルジャー 楠木祐 @kusunokitasuku
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