Ⅱ 化石

 結果があって、原因がない。そんなことはありふれていて、例えば化石として見つかる生物の肢体がそれにあたる。

 化石は骨格を残し、あるいは外形を残し、質量を遺す。そうしてその生物は数億年の時を経て、化石として発見される。

 しかし化石が形成されるまでには様々な経路が考えられる。遺された骨格からは、その生物の身体がどのような経過を経て死に至ったかを予測する手がかりを得ることはできない。極端な話、突如として本当に地上から飛び立った可能性もある。

 仮説としては、飛び立つ過程で手足が折れたり、頭が折れたりして、空を飛び損ねた、という具合である。飛び立つ時に手足が折れなかった、ということから、その生物は飛び立つ前に死んだ、という観察結果が導かれる。

 飛び立つ、という言葉を選んだのは、そういう勢力が、今のところ化石の形成の起源としては有力であるという証拠による。


 飛び立つ前の個体ならまだ地上にいたわけで、つまり地上で死ぬことが多い。地上で死ぬとなると、身動きがとれなくなって、外骨格が硬化し始める。そうでなければ、化石は残らない。地上で化石が形成されるまで、個体は「化石になりかけ」の状態を維持する。そこには長い時間が経過し、化石は認識を失っていく。

 化石になりかけの時期に、自分が化石になりかけていることを認識していたのではないか、という説は多くの人々を魅了している。ここからは化石が化石になる過程が理論的に解けるのではないかと人々は考えた。

 化石たちは様々な勝ち負けを繰り返し、恐竜は絶滅したり、絶滅しなかったりするが、化石になりそこねた化石たちは生き残って今日も地上に暮らしている。


 化石になりそこねた化石を集めて、生物の動きを再現する試みが行われ、再生された映像は人気を博した。これは、骨格標本に手足を取り付けてみた、というような、単純な作業によって再現された映像ではない。骨から情報を取り出し、手足を復元したということもあるが、それよりもむしろ月の満ち欠けを再現するような、生物の個体の位置情報を化石の堆積に沿って保存し、逆算によって推定された映像を決定する試みに似ている。

 化石の位置を決める要素は色々あって、化石同士の重なり具合、相互の関係などが重要である。空間的な位置づけはどうでもよいと考えられることもあるが、化石に含まれる記された情報は空間の変化に伴って変化する。化石になりそこねた化石たちが語るには、復元された個体は「自分だ」という意見と「自分じゃない」という意見が戦っている。

「自分じゃない」とする意見の方が多数派であるが、「自分だ」とする意見が多数派であった時代も確かにあった。

「自分じゃない」という意見を主張する化石たちは、かつて生物であった自分たちを他の個体の一部として細分化してしまった。

「自分だ」とする意見を主張する化石たちは、かつて異なる個体であった自分たちを同一の個体の一部として統合してしまった。

 化石になりそこねた化石たちが集まって、個体の動きを再現する映像を復元する試みは長く続けられたが、やがて失敗した。そうして残されたのは、なにかの十字架を頭部に突き立てられた、満身創痍の個体の姿だった。

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