激突!クリムゾンドラゴン対ブラックドラゴン!!
@syu-inononn
邂逅
早朝、金髪の少年は道端にひょっこりある祠の前に来ていた。
甘いものをお供えすると願いを叶えてくれるという蛇神様の祠だ。
「さぁ、ここよ」
金髪の少年の肩に停まっている梟は囁いた。
「これ、学校で噂になっている蛇神様の祠じゃないですか?」
金髪の少年、カミトは自身の疑問を口にした。
「そうよ。あなたの欲しい物を手に入れるには手続きも必要なの」
「手続きですか・・・・」
カミトは言葉を漏らした。
ーーーーガラッ!!
祠の扉が突如勢い良く開き、白い蛇が顔を出した。
「よ!さえずり!!オイラになんの用だ?」
白い蛇は舌をチロチロさせ、元気よく声をかけてきた。
いきなり思いもよらぬ光景を目にしてカミトは固まった。
ーーーー蛇神様ってこんな存在だったのだろうか?なんかすごくフランクと言うか気安い存在になってる・・・・。
「あら、ホムラ。今日はお願いに来たの」
「おおっ!なんだ?言ってみろ」
白い蛇は嬉しそうな顔で梟を見つめた。
「その前にまず紹介するわ。彼は旦那様の息子のカミト。用件は彼から聞いて」
「おおっ!!アイツの息子か!なんだなんだ?」
白い蛇はカミトの顔を覗き込んだ。
「えーと・・・・」
カミトは緊張しながら言葉を紡いだ。
その日の放課後、メルフィーア=アースガルドは
ひたすら準備に追われていた。
明日は学校主催の夢のスポーツ対決の日である。
「あのぅ、何故オレがあなた達のチームのメンバーに?」
メルフィーアと同じデザインのベースボールのユニフォームに身を包んだ金髪の少年。
彼女の隣のクラスであるカミトはボソッと漏らした。
「仕方ないだろう。全校生徒のアンケート結果によるドリームマッチだ。わたしとバッテリー組む姿を
見たいものがいたってことだろう」
メルフィーアは笑いながら語った。
「・・・・・で、オレのクラスの女の子がマネージャーみたいな事をやっているわけですか」
カミトは呆れた顔をして黙った。
「そう言う事だ」
燃えるような赤毛の少女は豪速球を金髪の少年にぶつけた。
「相変わらずパワー過ぎますよ」
「カミト、鍛錬が足りないぞ」
「どんだけ自己鍛練してるんですか!!」
メルフィーアの言葉にカミトは思わず叫んだ。
「やっぱり、ここは雰囲気からオレがキャッチャーなの??」
カミトは疑問というか不満を漏らした。
いくらなんでもだ。
自分より身体付きがしっかりしているメルフィーアがキャッチャーならなんとか理解できる(不満はそれでもあるが)。
どう考えてもこの場合、メルフィーア本人がピッチャーやりたいだけなんじゃないか?
と言いたい気持ちをカミトはぐっと堪えた。
しばらくよくわからないキャッチボールに付き合った後、異変は起きた。
「カミト、妙な雲が出ているぞ」
メルフィーアは学校から離れた山の方向を指さした。
カミトも言われた通りその方向を見てみると
確かに妙な黒い雲が目についた。
まず黒い雲が妙な柱の形を複数作り、固まった。
妙な柱黒いアンテナ塔にも見える。
そして、巨大な金属の板を複数枚組み合わせたような化け物が姿を現し、何かを出すような動きをした。
何か妙な音が響き、黒い巨大な雲に包まれた何かがアンテナ塔によって出現する。
そして、雲が晴れた瞬間、
『ーーー!!!!?』
声にならない驚きの声をカミトとメルフィーアは出した。
「黒いクリムゾンドラゴン!!?」
カミトがやっと言葉を絞り出した。
「クリムゾンは紅という意味だから、あれはノワールドラゴンとかブラックドラゴンとかじゃないのか!!?」
メルフィーアは自分が操っているクリムゾンドラゴンと似た黒い巨大なロボットをみて、混乱していた。
見た目が黒い事や全体的なフォルムが少し細い事を除けばクリムゾンドラゴンとほぼ見た目が変わらないロボットが彼らの目に前に立ちはだかっているのだ。
メルフィーアは戦いの場においていつも落ち着いているが、今この状況においてどうすればわからくなっていた。
なんと言っても自分によく似た存在が目の前にいるのだから。
「ここはオレに任せてください」
カミトの言葉にメルフィーアは我に返った。
「わかった!カミト!避難誘導は任せたぞ」
そして、カミトは走り去った。
メルフィーアは隠し持っていた剣を天に掲げ、叫んだ。
「ドラゴーン!!!!!!」
光に包まれたメルフィーアは姿を消し、大きく開けた場所にクリムゾンドラゴンが姿を現した。
メルフィーアは自身がクリムゾンドラゴンのコックピットに移ると開口一番に叫んだ。
「ジェネシス!!」
『ドウシタ!?メルフィーア』
サポートプログラムであるジェネシスは驚きの声を紡いだ。
「あの黒いロボットは何なんだ!!?」
メルフィーアはコックピットのパネルに映し出された黒いロボットを指差した。
『・・・・アレハ失ワレタ、ドラゴンダ』
「失われたドラゴン?」
『記録ニシカ残ッテナイガ・・・・名ハサファイアドラゴン』
「サファイアドラゴン?」
『コノ情報ハオソラクニナル』
「あのロボットは味方・・・・いや、仲間ってことか!!?」
『本来ハ・・・』
メルフィーアの言葉にジェネシスは戸惑いを覚えた。
「ジェネシス、どうした?」
『・・・生命反応ダ』
そして、ジェネシスは静かに続ける。
『・・・コノ装置ノ精度ガ低イカラ中ニ生キテイル人間ガ乗ッテイルカドウカワカラナイ』
「ダメ元で構わない!!中に入って確認しよう!!」
『・・・・メルフィーア』
ジェネシスは静かに彼女の名を呼んだ。
メルフィーアは我に返り、顔をしかめた。
「あ!!!しまった!!わたしがあの中に入るわけにはいかないんだった」
それに気づいて良かったと言わんがばかりにジェネシスは彼女の変化について確認した。
『トコロデ、メルフィーア。オ腹ノ辺リニナニカクッツイテナイカ?』
メルフィーアはいつも通り紅を基調とするパイロットスーツを纏っているが、今回はお腹の辺りに星マークのステッカーらしものが貼られている。
「ホントだ。さっき靴を履き替えた時に靴箱の中に入っていたものをポケットに入れたから・・・・それか?」
『ナルホド。メルフィーア、マズ、ソレヲ左ノ手首ニ貼ルンダ。ソシテ、今話シタイヤツノ名前ヲ
ソレニ向カッテ大声デ叫ベ』
「わかった」
メルフィーアは星のステッカーを言われた通り、左手の手首に貼り、そしてそれに向かって大声で叫んだ。
「カミトォォォォォ!!!!」
『うわぁぁぁ!!びっくりしたじゃないですか!!』
ステッカーから聞き覚えのある少年の声が聞こえた。
「おおっ!!星のステッカーが返事をした」
『フフッ。ヤハリナ。ソレハコノ地ノ神々ガ用意シタ通信器ダ』
ジェネシスは思った通りなのか、何故か意地悪が成功した様に笑っている。
この場合は笑っている様に機械音を紡いだと言ったほうが正しいだろう。
「カミト!!聞こえているんだな」
『大声を出さないでください。耳が痛いです』
「すまない」
『ドウヤラ、カミトノ方ハ耳ニ着ケテイルヨウダナ』
ジェネシスはカミト側の状況を解説する。
「カミト、頼みがある。おそらく、あの黒いロボットにも首の辺りに緊急脱出孔がある」
『そこから中に入って誰かいるか見てくればいいんですね?』
「そうだ。場合によっては介錯も頼まないといけないが・・・・」
『百も承知です。・・・・汚れ役は慣れてます』
カミトの返事の重さにメルフィーアは何も言えなかった。
「準備ができたら動きを止めに入る。言ってくれ」
自分ができない以上、やってもらうしかないのだ。
メルフィーアは、言葉を続けるしかなかった。
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