第5話

今日は高原くんはまだ来ていない。バイトかな?教室でぼんやりしていたところ、


「足助くん」


突然名前を呼ばれてびっくりした。だってあまり呼ばれることなんてないから。


「愧島さん?」


珍しい。まさか…デートしませんか?とか?


「これ、補習のプリント。提出してって先生が」


「えー」


補習プリントか。またかよ!でも、愧島さんもやるのかな…。ってことは今日は放課後2人っきり!?そんな妄想をしていたら、いつの間に愧島さんは消えていた。


午後の授業の途中で、高原くんがやって来たので2人っきりは無しかも。そうこうしてるうちに、放課後になったわけであるが…残ったのは、俺だけ?え、なぜ。

時間かかったけど、無事終わらせて先生に提出へ行くと、


「足助くん。これ、午前中渡しましたよね?今終わったんですか?」


「えぇ、そうですが。これは、放課後の補習用ですよね?」


「…今日中に提出して下さいと言いましたが」


勘違い。ゆっくりする時間もなくバイトへ向かった。時間無駄にした…。


「遅いよー足助くん」


しかも、店長と今日一緒かよ。うんざりだ。


「ギリセーフです」


「また補習?」


ふん。何も言うものか!もくもくと仕事をすることにした。売れ残ったおにぎりは、今日は持って帰ろう。艶耀がいるし。

仕事を終えて寮へ帰ると、荷物を持った艶耀が扉の前で待っていた。


「もー!遅いよー!早く鍵開けて?」


「あー。すまん」


「鍵持ってないんだからー」


「そうでした。あー女の子と同棲がよかったなぁ」


「そんなこと言わないでよ!」


部屋に入り、艶耀に予備の鍵を渡した。なんか、ちょっと嫌だなぁ。艶耀はどうやっても男だしー。


「お腹空いたねー」


「あ、そうだ。高原くんの所行こう」


今日、話してないし、おにぎりあるし。


「え?高原って誰?」


「寮の友達だから、行くぞ!」


艶耀を連れて、3階まで降りる。ちなみに俺は5階に住んでいる。高原くんの部屋に着き、チャイムを鳴らす。


「高原くん!足助です」


「あれ?何?」


すぐに出てきてくれた。


「いやぁ、こいつを紹介しようと思ってね!」


艶耀を高原くんの前へ出す。


「はじめまして!市川艶耀いちかわえんようです!」


「え、なんなの?誰?」


高原くんは困ってしまった。


「優くんの友達です!中学生です!今度から一緒に寮に住みます!」


「へぇ。そうなんだ」


「あなたは優くんの友達なんですか?」


「すぐるくん?あぁ、足助くんのことか。まぁ、そうです。俺は高原優たかはらゆうです」


「そうですかぁ。今後よろしくお願いします」


「よろしく?」


「まぁまぁ、ご近所ってことでよろしく。艶耀の面倒も見てほしいなと思ってね」


「…あぁ、そう」


「あ、そうだ。高原くん、ご飯まだ食べてない?」


「あー、そうだけど」


「じゃ、これ食べない?おにぎりの乱れ打ち」


おにぎりがたくさん入った袋を差し出した。


「わー優くん!すごーい!嬉しー!」


なぜ艶耀がそんなに喜ぶんだよ…。


「じゃあ、一緒に食う?上がったら?」


「いいんですか?うわーい!」


艶耀は高原くんの部屋ではしゃぐ。人の部屋ですよ?


「わー、この部屋美人モデルさんのポスターだらけですねぇー」


「こらこら、艶耀ちゃん。この人は高原くんの彼女のジャムさんだよ」


「ふへー。すごいやー。え?外国人?」


「いや、ハーフだよ。日本語しゃべるし」


こんないいかげんな艶耀にまで、高原くんは優しい。さすがだ。


「キレイな人ですね!」


「そうだね」


高原くんは肯定した。なんということでしょう。


「艶耀、その辺にしといて、食べるぞ?」


「はーい!…あの~高原さんは彼女と、もしかして住んでるんですか?」


「そうだけど」


「じゃあ、お邪魔ですね」


「いや、今日はたぶん帰って来ないから」


「よかったー!なんかドキドキしちゃって!もし来たらなんて話そうかな?なんて!」


「艶耀元気すぎるし」


人のプライベート聞き過ぎなんですが。若いから許されるのだろうか?自分と置き換えてみると、無理なことばかりやってのける艶耀だな。

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