第19話 連邦病との闘い 診断
颯太、ミレイア、ガルスの三人は、ダルヴィス連邦の中心都市に向かうために出発していた。連邦の拠点から馬車で数日間を旅するその途中、颯太は今回の「連邦病」の謎を解くために、ミレイアとガルスに話を聞こうと考えていた。これまでの医療知識を頼りに、早急に病気の正体を突き止めることが、彼の最大の課題となっていた。
馬車がゆっくりと進みながら、颯太は窓から外の景色を眺めつつ、重い話題を切り出した。
「ガルスさん、ミレイアさん、連邦病の症状について、もう少し詳しく教えてもらえませんか?」
ミレイアは軽く頷きながら、窓から外を見つめていた。
「もちろん、颯太。連邦病は、ここ最近急速に拡大している病気で、主に貧民街で流行しているわ。最初に発症するのは、急激な発熱と喉の痛み。それから、咳がひどくなり、体力がどんどん奪われていくの。最後には、体重が激減し、呼吸が浅くなり、患者は弱っていく。最も深刻なのは、体に大量の痰がたまることね」
ガルスが続けて言った。
「咳き込みがひどくなり、痰の中に血が混じることが多い。だが、なぜか治療に対する反応が鈍い。薬草や治療法をいくつか試しているが、いまだに効果的な方法は見つかっていない。ましてや、この病気がどれほど広がるかも分からない」
颯太はその言葉を聞き、考え込みながら返答した。
「……それは、現代の結核に似ていると思います。結核も、肺に感染する病気で、初期は風邪のような症状から始まり、咳や発熱、体重減少、痰の中に血が混じることが特徴です」
ミレイアは驚いた表情を浮かべて颯太を見た。
「結核……それはどんな病気なの?」
颯太は少し考え、真剣な顔つきで話を始めた。
「結核は細菌感染によって引き起こされる病気で、特に肺に感染することが多いんです。進行が遅く、初期のうちは風邪のような軽い症状しか出ないため、放置されがちです。しかし、治療をしなければ、徐々に肺に穴が開き、最終的には呼吸不全や衰弱で命を落とすことになります」
ミレイアが黙って聞いていると、颯太はさらに続けた。
「結核の怖いところは、その感染力です。患者が咳やくしゃみをするたびに、細菌が空気中に飛び散り、他の人に感染するんです。もし連邦病が結核なら、早急に対策を取らなければ、都市全体が感染してしまう恐れがある」
ガルスは真剣に頷き、颯太を見た。
「それじゃ、早急に治療法を確立しないと、確かに大事になるな。だが、連邦にはその結核を治す薬がないということか?」
颯太は無言で答えた後、深いため息をついた。
「薬がなくても、結核には治療方法があります。適切な治療をすれば、結核は治る病気です。しかし、早期に発見し、患者を隔離して適切な栄養と薬を投与することが重要です。それができなければ、感染は広がり、死亡率も上がります」
「それなら、君の医術でどうにかなるだろうか?」
ガルスの言葉に、颯太はしばらく黙って考えた後、力強く頷いた。
「可能性はあります。問題は、どれだけ早く対処できるかです。連邦病が結核であれば、すぐにでも治療を始めなければならない。もし感染が広がりすぎているなら、手遅れになるかもしれない」
ミレイアは颯太の言葉を聞き、決意を固めたように言った。
「じゃあ、急いで、患者の治療に取り組むべきね」
颯太はその言葉に感謝し、再度気を引き締めた。
「はい。まずは診断が必要です。連邦病が本当に結核なのか、それとも他の病気なのかを確認しなければなりません。しかし、私たちが着く頃には、既にかなりの数の人々が感染しているかもしれません」
その後、三人は馬車を急がせて連邦の中心都市に向かった。颯太はこの新たな挑戦に対する覚悟を決めると同時に、連邦病の正体を突き止め、そしてそれに立ち向かうために、どんな手段を使ってでも全力を尽くす決意を固めていた。
数日後、連邦の中心都市に到着した颯太たちは、すぐに病院に案内された。病院内は、数多くの患者で溢れ、スタッフたちは忙しそうに働いていた。その中で目立つのは、咳をしながらぐったりと寝ている患者たちだ。
「ここが連邦病の現場だ。患者の数は日に日に増えている。早く診断をつけてほしい」
案内してくれたスタッフが言った。颯太はすぐに患者たちを一人ひとり診察しながら、病気の原因を探った。
「やはり、これが結核の症状です。咳、発熱、痰、体重減少……間違いありません」
颯太はすぐに結論を出し、周囲に指示を出し始めた。
「患者を隔離してください。感染拡大を防ぐために、できる限り早く治療を開始する必要があります」
颯太と連邦病の闘いが始まった。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしこの作品を楽しんでいただけたなら、ぜひ評価とコメントをいただけると嬉しいです。今後もさらに面白い物語をお届けできるよう努力してまいりますので、引き続き応援いただければと思います。よろしくお願いいたします。
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