第6話 魔道具士になる条件
私は悩んでいた。
「錬金術士と魔道具士。どっちが良いだろう?」
確か、あの世で会った少年神は言っていた。
『あるよ。ある。本物の錬金術がね。成功すれば地位も名誉も望むだけ手に入る職業だ』と。
「地球のそれとは違う、本物の錬金術がある、か」
確かに彼はそう言っていたのだ。つまりアロママテリア。別名「賢者の石」はあるということだろう。だが同時に彼は言っていた。
「成功すれば、か」
そこに罠がありそうだ。果たして人間が神になれるのか?
いや。ここは異世界だ。ならばなれる可能性だってあるはずなのだ。地球とは違うのだから。
ただし決して簡単じゃないだろう。
そうなると私のそもそもの目標である「楽して稼いで左団扇で暮らす」は達成できないことになる。
「なんだ。なら魔道具士一択じゃないか」
でもいちおう……そうだな。お金を稼いで暇になったら錬金術をやってもいいかも。
さて。そうなると魔道具士に弟子入りをしないといけない。
まぁ伝手はある。というかあの安酒場に出入りしている魔道具士に頼めば良いのだ。でも大丈夫かな?
見返りとして体を要求されたりしないだろうか?
不安だ。どいつもこいつもスケベばかりだからな!
※
※
※
不安はあったが今のままで良いはずがない。そこで酒場に、ほぼほぼいつも飲みに来ている魔道具士に話しかけてみた。
「ボルさん。私。魔道具士になりたい」
「リサちゃんが魔道具士に?」
「そう。何時までも給仕の仕事はやってられないので」
するとボルさんが言った。
「うぅん。そうだなぁ。教えてもいいけど……」
ほら来た。交換条件。もし体を要求してきたら引っ叩いて別の人に頼もう。そう思っていた。しかし男は真剣な表情で言った。
「まずは冒険者になってみちゃどうだい? 腕っぷしには自信があるんだろ?」
え?
「なんて?」
冒険者?
「何故に?」
すると男は言った。
「正直、魔道具士を始めるには年齢が行き過ぎている。今から弟子入りして基礎からとなると何年先になるかわからない。それだと僕の持ち出しが大き過ぎる。まぁね。僕の愛人になってくれるなら生活の面倒も考えないでもないけど、それは嫌だろ?」
「はい」
「あはは。正直」
「でも、まぁそうですね。普通は七、八歳ぐらいから弟子入りしますもんね」
「そういうこと。リサちゃんは既に成人だ。自分の食い扶持は自分で稼ぐ。それをしながら空いた時間で魔道具士の基礎を学ぶ。という形が君にとっても僕にとっても公平だろう?」
確かに。となると、やっぱり冒険者からか。遠回りになっちゃったけど結局そこに行き着いた。まぁいっか。
ボルさんは更に言う。
「授業料も取らせてもらうよ?」
「はい」
まぁ当然だわな。
「授業料の総額は大金貨で十枚だ。払えなかったら奴隷落ち。支払いの期限は……そうだな三年でどうだろう?」
「何故その期限なんですか?」
「七歳から始めて成人の十五歳まで八年かかる。つまり職人の端くれになるためにそれだけの年数が掛かるんだ。なので本来なら八年と言いたいところだけど、それだと君が奴隷落ちした際に年齢が行き過ぎててね。言っちゃ何だけど奴隷としての商品価値が下がるんだ。女性の……しかも愛玩奴隷だと若いに越したことはない」
うわぁ……
現代の地球の人が聞いたら激怒しそうな内容だな。
「でももしかしたら戦闘奴隷になるかもしれませんよ?」
「戦闘奴隷か。腕っぷしに自信があるんだったな。それならまぁ戦闘経験があってその上に長く活躍できる二〇歳ぐらいが最上か。君は奴隷落ちした際にどっちになりたい?」
「戦闘奴隷!」
「そうか。なら期限は五年にしよう」
おっ、延びた。
「まぁ、でもそれもこれも君が支払えなかった場合だ。僕は大丈夫だと思ってるよ。根拠はないけどね」
いずれにしても通常より短い期間で職人の端くれを目指さないといけないのか。
いよっしゃ!
「頑張るぞぉ!」
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