第3話 家出じゃー!
「とぅ!」
城の塀を身軽に超える十五歳の私。
「ふはははは。この程度の障害なんて無に等しい!」
いや。城の塀が私への障害ではなく外敵からの防壁なのは知っているけども!
それでも、まるで私を閉じ込めておく檻のようじゃん?
だから飛び越えてみました。
「さぁて、と。これで私は自由だ!」
と思ったが、バレたら城から追手がやってくるかもしれない。だから早々に領都から逃げなくてはいけないことに思い至る!
だが、その前に冒険者カードな。
これは自由民のパスポートみたいなものだ。大きな街には入税料が要る場合があるし、それに冒険者になれば色々と面倒な税金の処理もしてくれるという便利なカードだ。身分証にもなるしね!
というわけで、さっそく冒険者ギルドへ向かう。
「とと……」
通行人が私を見ている。私は自分の格好を改めて確認。結構上等なドレス服を着ている。
「ふむ。これは男性の庶民服に着替えるべきか」
というわけで、冒険者ギルドへ向かう前に服屋へ向かった。季節は春なので夏用の服がいるな!
服屋で少年用の服を購入。女性にしてはそこそこ大きな身長の私だが成人男性と比べれば低い。少年用の服でちょうどいいくらいなのだ。
ドレスを売り、服を着替え、そしてわずかばかりのお金を得た。
ん?
城から金目のものを持ってこなかったのかって?
そんなことしたら泥棒じゃん?
それに無一文で家出するから意味があるのだ。
私は実家の力を借りずに一人で生きていくことの決意表明として、着の身着のままで家出をする。それにその方が面白そうだ。
という理由で家からは何も持ち出していない。これから私のレジェンドが始まるのだ。衆人共よ。刮目せよ!
というわけで服は着替えたので、まずは冒険者登録だ。
私は冒険者ギルドへと足を向ける。だが向かった先の冒険者ギルドで私は途方に暮れてしまった。
「トウロクリョウ?」
受付嬢が笑顔で答える。
「はい。登録料が必要です。大銅貨三枚ですね」
私はポケットから小銭を取り出す。少し大きめの銅貨が一枚と小さめの銅貨が三枚あるだけだ。私はそれを受付嬢に見せる。
「足りてない……ですよねぇ?」
受付嬢がニッコリ笑う。
「そうですね。足りてらっしゃらないようですね」
あうう。どうしよう。
私は受付嬢に問う。
「足りない場合はどうしたらいいでしょう?」
「稼いでください」
「仕事……」
「冒険者ギルドで仕事を受けるには登録が必要です」
無慈悲!
「どうしようもないじゃない!」
すると受付嬢が、わざとらしく今、思い出したと言わんばかりに棒読み口調で独り言を喋り始めた。
「そう言えば近場の酒場で調理補助と給仕の仕事を募集してたなぁ」
おぉ。それだ!
「ありがとうございます。さっそく行ってみます!」
私は踵を返し、その場を去る。すると後ろの方で受付嬢から「頑張ってくださいねぇ」と応援をされたのだった。
私は、さっそく雇ってもらった。身分証もない。紹介者も居ない。成人したての小娘を雇う酒場兼任の宿屋。どんなブラックな職場かとヒヤヒヤしたが意外に真っ当だった。
「給料は三食の賄いと宿付きで日当、小銅貨一枚。売りをするなら場所代を払いな!」
「売りはしません!」
自分の安売りはしない。さすがにそれは最後の手段にしたい。
というわけで私は食堂で調理補助と給仕の仕事を頑張ることとなったのだった。
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