第9話:走馬灯は過去を映すもの

フォー、40歳になりました。


現在子供が元気に狩りをできるようになり、そろそろ寿命が尽きる頃ではないか、という感じ。


怪我の治療は伝わっているが、病気の治療はまだできない現在、我々人類の寿命は40を超えることも少ないです。


そういった意味ではワンや僕は運がいいほうだったのかもしれません。


ファイブとセブンは30半ばに病死しました。


シックスは去年、38で亡くなったはず。


こういった記録を残すことは大切ですが、現状石に掘っている状態のため正確性には乏しい部分があります。


やはり、記録を残すには紙が欲しいです。


ということで何とか紙と墨を試作中だったりします。


墨も紙も職人が作るものが欲しいが、贅沢は言っていられない。


今のところ、よく焼いた炭に繊維の多く残る紙もどきで何とかできないか挑戦中です。


出来れば転生者の中に和紙職人と炭焼き職人が生えてきてほしいところ。


なんやかんやで続けてきたこの世界開拓記も僕の世代では最後となるでしょう。


私の最後の役割は人々に火と水、そして調味料の使い方を教えることとしました。


塩に胡椒、砂糖のような調味料は作成が完了、量産はできないものの採取したものから生成する手段は伝えてある。


死ぬ前に何とか採取できた豆のようなものから味噌を生成したいところ。


なんといっても前任者が叫んだ願い、味噌汁を飲むということを私の世代でかなえたい。


キリストは最後の晩餐の時、弟子にぶどう酒とパンを分け与えたという。


このぶどう酒が僕達にとっては味噌汁なのでしょう。


いつかパンも見つかるといいな。


望郷の味を死ぬ前に味わいたい。


それは転生者達の切なる願い。


私は料理人として、彼らの思いに答えてきた。


だったら最後にかなえるべきは、私の願いだ。


クリア歴20年、人類の食糧事情に革命が起きた。

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