第8話:生誕と死は防げない

フォー、30歳になりました。


そろそろ神の実を食べて子供を残すべきと判断し、神の木の使用許可を出しました。


神の木の回りには多くのお墓があり、正直食欲はわきませんが、背に腹は変えられません。


神の実は甘く酸味があり、ザクロに近い味がしました。


これで次の世代への橋渡しはできたはず。


そう信じて出産の時を待つ。


思えば前世では男性として生まれ育ったので自分が産む側に回るなんて考えたこともありませんでした。


すこし……怖いです。


ですが、人類の発展のため、やらなければならないこと。


今は必死になってやりとげましょう。


神の実から生まれてきた子供の容姿は亡くなったものに似ていることがあります。


つまり亡くなったものの遺伝子が刻まれているのでしょう。


もし、死ぬことがなくても血を残すことが出来たら。


そうすれば、人類の数は増え、更なる繁栄が出来ることでしょう。


いつか、誰かがそんな方法を見つけることを信じて、今は後を残すことを考えましょう。


子育ては以前より安定して行えるようになりました。


やはり雨風をしのげる家屋は心強い。


僕は僕に出来ることを、と思いベビーフードの開発に勤しんでいます。


悲しいことですが、食べさせては行けないものを与えてしまって死別した親子も少なくありません。


僕はそんな食の安全を保証できるようにしたい。


いつか訪れるあなた。あなたも自分に出来ることをすればいいのです。


きっとそれが、いつかどこかの誰かのためになるから。


クリア歴10年、人類は繁栄の一歩を踏み出した。

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