第4話:知恵の実はアダムとイヴが勝手に食べました

朝比奈静香、30歳になりました。


出産中です。


「あー!いたいいたいいたい!」


なんでだよ!?


子供が産まれるような行動とってないよ!


数か月前に赤い木の実を食べてから腹痛が続いたけどそれだけだよ!?


いや、それが原因か?


初めは死体の山にある禍々しい木から始まった。


甘くてとても美味しい果実。


それが生っているという情報は瞬く間に広がり、多くの人々がその果実を食べた。


興味本位……いやいや、安全確認のために私達転生者は全員その木の実を食べた。


結果、現在全員仲良く出産中です。


なんと現在ベビーラッシュ!


こっそり木の実を食べていたものや噂を聞いて食べに来てしまったものまでありとあらゆる人類が妊娠した。


いや、恐怖だよ!?そこら中から呻き声が聞こえてくるよ!?


そもそも無性の生物のはずじゃなかったのか!?


いや、違う、これはあれだ。


神様から授かった知恵の果実ってやつ、あれみたいなものかも。


あれ?授かったんだっけ?勝手に食べた?まあ今は良いか。


死んだ人の分だけ産まれる人がいる。


さながら神様の帳尻合わせだ。


残酷なような、効率的なような。


と、とにかくこの人類が増える方法はわかった!


あの果物を食べたやつが妊娠する!


これからは増やしたいときに食べる!


それ以外の時には厳重管理!


結構大事なものだから、これを拠点に街を作ろう。


そして木自体は墓地……いや、教会をたてて管理させよう。


神秘の異物には神話が必要だ。


この木は神の木として、神聖なものとして保護していこう。


それが、人類の未来のためになるだろうから。


紀元前30年、人類に神話が産まれた瞬間である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る