第2声 店長の粋な計らい
「ふぁ〜ぃ」
お風呂から上がってコーヒーを一口
髪の毛は濡れたままだが気にしない
タオルをグルグルにしてまとめている
「このシリーズも飽きたな」
インスタントも美味しいが、喫茶店で入れてくれるコーヒーの美味しさを私は知っている
片っ端から違うメーカーを飲んでいるが、好みの味は見つからないものだ
「長期戦だな」
私は悟った
コーヒーの旅は終わらぬということを。
そんなこんなで約束の時間に。
夜の繁華街はとてもキラキラしていて綺麗だ
綺麗なキャバ嬢、売れないホストのキャッチ、送迎ドライバーのおじちゃん
まだ19時なのにお疲れ様です。
私はキャッチに捕まること無く、目的地である居酒屋に到着したのだ
「「いらっしゃいませ〜!!!」」
店内から元気な声が聞こえた
「おひとりですか?」
若めのスタッフが対応してくれた
学生かしら、イケメンだわ
「2名で予約してるんだけど、相方もう来てる?」
私はフラットな対応をした
何を言おう、私はここの常連だ!
だがこのスタッフには通じなかったらしい
恐らく新人だろう
「え…っと、相方、さん?」
イケメンが戸惑っている
無理もないか
これは私が悪かったわ
「すみません19時に予約してた一ノ瀬です」
最初からこう言えば済んだのだ
でも行きなれた店であれば、あぁも言いたくなるもの
う〜ジレンマだわ
「失礼しました!一ノ瀬様ですね!」
やっと通じたのか安心した顔を見せたイケメン店員
「お連れの方いらっしゃってますよ!」
…あーらら、もう着いてるのか。
遅れると後が怖いんだよなあ
「ご案内します!」
そう言った爽やかイケメン君の後ろを着いてく
席に行くまで厨房付近を通らなきゃいけない
タイミング良く右手奥、厨房から声が聞こえた
「なんだ湊じゃねーか、いらっしゃい」
ダンディーな髭だるm…ゴホン!
ダンディーで髭がイケてる店長がいた
「今日は厨房にいたのね。フロアが静かで何よりよ」
顔見知りだから少し冷たい私
「だって俺がフロアに出ちまうと、客が帰らねぇ帰らねぇ」
やれやれ…と両手を左右に振りながら言ってくる態度にプチイラっ
「だぁーれが居ると客が帰らないって?聞こえなかったわあ。悪いけどもう1回言ってくれる?」
挑発に挑発で返した私♡
「おいおい今日はいつもより言葉に棘があんなぁ。疲れてんのか?」
流石に元に戻してきたか
店長はこう見えて私の2回り上(42歳)なの
最終的には言いくるめられて慰めてくれる
それに私も毎回甘えるの
大人の人って、ずるいわ…
立ち話とはいえ通路で話していた私達
それを戸惑いながら見ていた爽やかイケメン君
…忘れてたわ
「…あの〜…お席、案内しますね?」
ハッ!と我に返った店長と私
すみません、と軽く謝り後ろをついて行こうとした
後ろでは
「程々に飲めよ〜湊〜」
と言っている髭だるまが居るが、無視だ。
席に行くまで長いよ全く
「こちらでございます」
案内されたのは角部屋に位置する小上がりの座敷
他のお客様から見られることも無く、新規であればここに席があるとは分からないと思う
予約した時の名前は私の名前だから…
「店長の粋な計らいか…」
長年付き合いがある為、みなまで言わんでも伝わるらしい
むず痒いなぁ〜
「おっっそい、いつまで待たせんだよゴラァ」
綺麗系な見た目なのに声は野太い
席に座ってるのは、今日約束してた友人だ。
「おひさ、沙耶」「お〜湊」
私達はお互い顔を合わせ、笑った
夜はまだまだこれからよ!!!
「ありがとう」を隣で言わせて? 如月 律 @Kiki_10
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