Lettre 《手紙》

◇◆Noah◆◇


インターホンを鳴らすとエリックのお母さんが出た。

エリックは昨日からずっとふさぎ込んでいるから少しおしゃべりして気を紛らわせてあげてって言いながら通してくれた。

お茶をもってくるわね、ってエリックのお母さんはキッチンへ行ってしまったので、そのままエリックの部屋のドアをノックする。


「エリック?」


ノックをしても返事がない。元気がないんだろうか。

もう一度ノックをしてから静かに扉を開けるとエリックはベッドの上で横になっていた。


「寝てるのかな」

「起こしたら悪いから帰ろうよ」


こしょこしょと小声でそんなことを話していたら後ろからエリックのお母さんがお茶をもって「エリックは?」と俺たちに尋ねる。

寝てるみたいですって言おうと思ったら部屋の中から「わっ」てエリックが驚いたような声がした。


起こしたかな…って思ったけど、どうやらそうではなかったらしい。

起き上がったと思ったら、何やら考え事をしているようだった。



「エリック、お友達よ。……あなた、また特殊魔法使ってたの?」

「お母さん…ロンとノアも……」

「捜査でいろいろ聞かれた時も使ってたでしょ?体は平気?あんまり使うと体に障るわよ」

「……大丈夫だよ。ロン、ノア、ねぇ、こっちへ来てよ」



エリックのお母さんは心配そうにエリックを見ていたけど、エリックは気にしていなさそうだった。

それよりも、今見た” ”に驚きを隠せない様子だ。



……俺たちは知ってる。エリックの特殊魔法。

いつだったか、エリックにロンと一緒に過去に連れて行ってもらったことがあったんだ。

3人で見た花の色が青だったか白だったか黄色だったかで意見が分かれて、じゃあ見に行こうぜ、って見に行ったんだったな……特殊魔法をそんな風に使ったらダメって、校長先生に3人で怒られたんだっけ。



エリックは今、何を見てきたんだろう。



エリックのお母さんも心配そうな様子を隠しきれていない様子だが、たった今別の来訪があり、部屋を離れた。

事件の後だからいろんな人が訪れるらしい。


エリック、と声をかけようとしたらエリックが突然しゃべりだした。


「兄さんが……兄さんは……まだ、どこかで生きていないのかな。ねぇ、天に召されるって、死ぬことなのかな。死んだら、僕たちは、どこへ行くの?ねぇ…もしかしたら……この””をたどれば僕は、、僕は、兄さんに会えるかもしれない……」


俺たちに話しかけているのか自己解決しているのかわからない様子でエリックは興奮気味にしゃべり続けている。


今言った " " って、なんのことだろう。

何か自分の考えに没頭している様子だけど、エリックってこんなにしゃべる奴だったっけ?


この事件を境にエリックは、少し人が変わってしまったように思えて、なんとも言えない気持ちになった。

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