【感想】 『竜虎一代』(1964年/主演:鶴田浩二)
監督 小林恒夫
脚本 村尾昭
原作 岩下俊作
出演 鶴田浩二、佐久間良子、千葉真一、藤純子、天知茂
あまり知られていない作品だが、これは隠れた傑作なのでは。鶴田浩二演じるヤクザが労働に目覚めるプロレタリア・アクション。
北九州に鉄道を敷くため、工事を請け負った松橋組とそれに反対する川船頭、石岡組が対立するなか、ひょんなことから松橋組の線路工夫として働くことになったヤクザの姿を描く。
劇中で松橋組の長女、藤純子が「うちはヤクザじゃなか!」と言っているので、鉄道建設推進、反対どちらもカタギのはずなのだが、仕事に対するプライドと将来をめぐって抗争が勃発。
特に反対派の行動はエスカレートしていき、親方はチャカで武装、手下はドスを持ち歩き、ついには暗殺に爆弾テロと、もはやヤクザを通り越してテロ集団。一方の建設する側は警察沙汰になると計画が頓挫しかねないため我慢を強いられるあたり、カタギとはいえ、対立の構図がヤクザ映画のそれなのは面白い。
キャストで印象に残るのは天知茂。同年の『博徒』では敵ボスだったが、こちらでは悪役ではないのに敵ボスになることを選ぶ、一筋縄ではいかない境遇のキャラクターを熱演している。
彼は鉄道建設反対派、石岡組の長男だが、悪事には一切加担せず、むしろ抗争を終わらせるための話し合いに奔走する。しかし、事態は彼の意に反し、最悪の結果を迎え、殴り込んできた主人公と対決することになるのだが、それも抗争を終わらせるためだ。長男である天知、部外者である主人公、どちらも自分が矢面に立つことで、すべての罪を被り、遺恨を残さぬようにしている。
まさに命を懸けたケジメのつけ方、責任の取り方。理不尽にも感じられる苦くて悲しい殴り込みだ。争いを終わらせるための戦いゆえ、決着はついても、そこに勝敗はない。
そんな男ふたりの戦いはシンプルなセット内で展開し、燃え上がる提灯の炎が彩りを添える。
特筆すべきなのはミニチュアを使ったスペクタクルシーン。特撮を担当するのは昭和の東映特撮といえばこの方、矢島信男。モノクロ映画ゆえ、粗は目立たず、かなりよく出来た迫力のあるシークエンスとなっている。こういう映画で大掛かりな特撮シーンを見ると、なんか得した気分になるなぁ。
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