第22話 冬見視点


 珀斗くんは誰にでも優しい。

 というより分け隔てが

 ないタイプだと思う。


 誰かをいじめることもしないし、

 特別可愛がることもしない。


 ああ、いや夏芽さんは別かな。

 よくつるんでるし……。


 でも珀斗くんはやっぱり優しい。

 私が上級生に絡まれているときも……。


「あ? 弱いもの虐めかよ」


 ……と助けてくれたことがある。

 本人は覚えてないみたいだけど。


 そんなだから

 三人組を作れと言われたとき

 真っ先に話しかけた。


 二人組なら多分夏芽さんに

 勝てないけど……。


 三人組なら話は別だ。

 素早く行けば私だって……!


 …………や、やった!

 なんとか珀斗くんと

 組めることになった。


 なんか夏芽さんが

 不機嫌だったのが怖いけど

 

 あの人、イケイケな性格だから

 私と相性悪いんだよね……。


 でもこの機会に

 珀斗くんとお近づきになって……。


 え、えへへへ……。


 さて、放課後。

 私は珀斗くんに呼び出された。


 武器研究会の鍛錬と……。

 私の術式を見たいらしい。


 あけすけによく言えるなぁ。

 お尻の穴を見せてくれって

 言ってるのに

 等しいんだけど!?  


 で、でも学期試験で

 連携するなら必須だよね……。


 うう……。


 ま、まぁ珀斗くんになら……。


 と思ったけど

 夏芽さんや先輩方もなんか

 凝視してくるし……。


 うう、緊張する。


「で、どんな術式なんだ?」

「わ、わかった、見せるよぅ……」


 私は鞄から熊ちゃんのぬいぐるみを

 取り出してそれに術式を使う。


 途端にぬいぐるみが

 巧みに動き出すようになった。


 もちろん私が動かしているのだ。


「おお! すごい

 どういう術式なんだ?」


「えと、私の術式は【操作】。

 幻力の強いものは無理だけど

 これぐらいなら自由自在」


「他にどんなのを操れるんだ?」


「あ、愛着のあるものじゃないと

 難しいからこれしか……」


「それってどうやって戦うんだ?」


 落胆、というよりは

 心底困惑しているような顔。


 う、うう……。

 だから私は三等なんだ……。


「愛着のあるものを

 増やせばいいのさ。

 あるいはぬいぐるみ

 自体を強化するとか」


 ……と木陰で寝転んでいた

 先輩が何やらメモしながら

 そう言ってきた。


「あ、そうです!

 ぬいぐるみに武器を

 持たせてみてはいかがでしょう!」


 青髪の先輩が

 にこやかにパンッ、と手を叩く。


「で、でもあんまり

 重たいものは無理かも……」


「ではメリケンサックなんて

 どうでしょうか!?」


「そ、それぐらいなら……」


 なんだかチヤホヤされてる感じ。

 流石は珀斗くんの部活。

 色々な案がポンポン出てくる。


 でもそれを見ていた夏芽さんは……。


「今からでも人員代えない?」

「なんでだよ、いい術式だぜ」

「そうかなぁ、弱そうだけど……」

「とりあえずクソデカい

 ぬいぐるみ買ってくるか」


 ……なんか私を外すとか

 クソデカいぬいぐるみを

 買ってくるとか……。


 ……無事に学期試験

 超えられるかなぁ……。

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