第2話
突然教室に響いた大きな音に顔を上げると、教室中の視線の先にミルクティー色のふわふわの髪の毛の男子生徒が大きく目を開き、今扉を開けましたよ感満載で立っている。
何だ、あの人が勢いよく扉を開けただけか。
なんて騒がしい人なんだ、ああいう人とは絶対に関わりたくないものだね。
もう一度机に顔を伏せようとするとその男子生徒が周りの生徒を器用に避けながら私の前まで来る。
「おはよう!りんちゃん!やっと会えたな!」
……は?
りんちゃん?やっと会えたな?
私どこかでこの人と会った事あるっけ?
いや、その前に私の名前きらりだよ?人違い?
それなら最悪なんだけど。
この人のせいで皆んながこっちを見てるし、この人の手が机に乗っているから顔を伏せて視線を遮る事もできない。
はぁ……もうほんと最悪。
「ねえねえ!りんちゃん!りんちゃん!今日の放課後暇?暇なら遊ぼうぜ!おれ色々知ってるんだぜ!?すっげー美味いパンケーキ屋とか、すっげー面白い店も知ってるし、すっげー馬鹿でまじ最高な友達もいるんだぜ!?凄いだろ!?気になるだろ!?」
うん、びっくりするくらい興味をそそられない。
それより早く人違いって気づいてよ!
じゃないと……ほら来た。
「ちょ、ちょっと
「あ?何でだ?」
「あ、いや、その……」
言いにくい事ならわざわざ言いに来なきゃいいのに。
それにしてもこの男子生徒は話しかけてきたわりには私のこと知らないのかな……?
モジモジしている女子生徒の後ろから背の高いショートヘアの女子生徒がブレザーのポケットに手を突っ込みながら歩いて来たと思ったら、いまだにモジモジしている女子生徒の後ろで立ち止まり、一言言うと女子生徒は一瞬飛び跳ねて急いで自分の席に帰って行く。
え?何が起きたの?
このクール美人は一体何者!?
「お!サンタ!お前も今来たのか?」
「お前も?てことはあんたも今来たの?」
「いいや!いいかサンタ、驚くなよ!?ジャーン!!」
目の前にいた男子生徒はそう言うと前から横に移動して私をクール美人に見せびらかす。
何?この状況、新手の嫌がらせ?
何で私この人に紹介されてるの?
ていうかこの人誰!?
私知らないんだけど!?
「どうだ!驚いただろ!?」
「……別に。」
「んだよ〜!あ!そうだ!お前も来るか?今日の放課後りんちゃんと遊ぶ約束したんだけどよ、どうせお前も暇だろ?」
クール美人は男子生徒のマシンガントークに一切耳を傾けず私の前の席に座る。
って私遊ぶ約束した覚えはないんだけど!?
ひとしきり1人で話した男子生徒は私の隣の席に座り私の方に体を向けまた口を開く。
「おれ
詠翔?
やっぱり私この人知らない。
よろしくなんてしたくない!
だってクラスの皆んなを見てみ?凄い剣幕で私を睨んでるよ?
この人絶対モテるタイプだ!
こういうタイプと関わっても良いことなんてない。
この状況があの時の事を思い出させる。
もうあんな思いはしたくないの……。
お願いだから私の事は放っておいてよ……。
詠翔の言葉を無視してもう一度机に顔を伏せる。
寝ている人には流石にこの人も話しかけないでしょ。
と思ったのに……。
「なあなありんちゃん!りんちゃんって好きな食べ物ある?おれはねー今まで食べたものは大体好きだったぞ!だから嫌いな食べ物無いんだぜ!すげーだろ!」
何でまだ話しかけてくるのよ!
寝てるんだよ!?
皆んな睨んでるんだよ!?
嫌いな食べ物が無いだけでドヤってるし、確かに少し凄いかも……色んな意味でね。
そのまま昼休みが終わり5時間目の数学の授業が始まる。
「なあなありんちゃん!りんちゃんは数学好き?おれは大っ嫌いだ!」
うるさい、うるさすぎる。
授業が始まって小声にはなったけど、無視してるのにずっと喋ってる。
前の席のクール美人も時々詠翔の事睨んでるし、クラス中の女子はずっと睨んでいる。
もうそろそろ勘弁してほしい。
「そういえば昨日風呂でホットココア飲んだんだけどよ、やっぱりホットココアは寒い所で飲む方が美味いよな!」
あー!!もう限界!!
「「うるさい!」」
「アハハハッ!2人共息ピッタリだな!」
タイミング悪くクール美人とかぶってしまった。
横目で詠翔を睨むと詠翔は泣き真似を始める。
「うわぁ〜ん!おれ2人で睨まれたらおれ泣いちゃうよ〜う!」
「黙れ。」
わぁ〜お、なんだかさっきの女の子が怖がってた理由がわかる気がするよ……。
「あ!そういえばりんちゃんはサンタ初めましてだよな!こいつは
私からしたらあなたも初めましてなんだけどね。
それにしても山田だからサンタだったんだ。
フフッ、面白いニックネームだなぁ。
「こいつおれの幼馴染なんだけど友達いねえから仲良くしてやってくれよな!」
「余計なお世話よ、嫌なら無視していいから。」
充佳はそう言って前を向く。
嫌なわけじゃ……いや、嫌なのかな?
私はどうしたいのかなんてもうわからない。
あの時、私は自分の気持ちに蓋をして全てを捨てて、逃げて、ここに来た。
でも氷亮と出会って今までのが全部嘘だったかのように一瞬で全てが吹き飛んで無我夢中で氷亮に飛び込んだ。
だからこうなってしまったんだ。
もうあんな思いするくらいならいっそ1人の方がいい。
うん!そうだよ!
明日からはまた快適なひきこもりライフだし!
あ〜あ〜、早く家に帰りたいなぁ〜。
お布団が私を待っている〜!
私の唯一安心できる安全で快適な場所、それがお家!
お家万歳!!1人暮らし最高〜!!
ア、イ、ラ、ブ、おッうッち〜♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます