第15話


帰る頃になって、そこで初めて俺はスマホがないことに気付いた。



あ、あれ??



スーツのポケットや鞄の中を必死にまさぐったけど…



ない!



落とした??でもどこで―――…?



と考えていて、俺は思い出してしまった。



「あ、あいつん家だ!」



な、何で寄りに寄ってあいつの家に……



俺は今朝の変態男を思い出して思わず頭を抱えた。



と、取り返さなければ……



あのスマホには比奈との思い出の写真がたくさん残ってる。



消去しようかと思ったけど、結局できなかった。



俺……ホンっと諦め悪いな……





エレベーターで一階ロビーに降りながら、



「えっと…あいつ何て名前だっけ。確か半径だか直径だか…」



「円周率だ」ふいに近くで男の声が聞こえて、



「そう!円周率!」



思い出して顔を上げると、目の前にはあの変態男がにこにこ立っていた。



な、何故居る―――!!



あまりにも驚きすぎて思わず後ずさりしてしまった。



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