第3話 親友と友達になりました(?)
「ずっっっっと同じように転生してきた奴を探してたんだよ!ていうかいつ転生したの?出会った当時っで全然そんな感じじゃなかったよね?もしかして今日転生したばっかりとか?だとしたら適応能力めちゃくちゃ高いね!僕とかしばらくの間は人と話すのも不安で可能な限り部屋にこもってたりしてたよ!」
「お、おう。」
俺は今、寮にあるダイヤの部屋にお邪魔している。
というかほぼ無理やり連れ込まれた。
帰り道の途中、互いにゲームの世界に転生した者同士だと分かった瞬間に俺の手を握ったまま走り出しそのままダイヤの部屋へGoだ。
そして部屋に入って即饒舌に語りだした。
うーんエネルギッシュ。
これが若さというやつなんだろうか。
いや、元の俺が何歳なのかも俺はわからないのだが。
「……というかよくわかったな。俺が転生者だって。」
「まぁ明らかに今までと雰囲気が違ったし……それにこの世界の元となったゲームのOP歌ってんだもん!あの曲をこの世界で聴いたこと一回もなかったからもしかしてってさ!」
なるほど、俺が気付かない内に転生者であるヒントが漏れ出ていたのか。
まぁ結果的に似た境遇の奴と分かってよかった。
「……それに、昔ほかの転生者にあったことがあるんだ。だから同じような人間が他にもいるかもって。」
「へー、他にも転生者いるんだ?」
なんか多くない?転生してる人。
「ちなみにその人は?」
「……だいぶ前に亡くなったよ。僕の師匠だった人さ。」
おっと、思っていた以上にヘビーな話だった。
大切な人だったのだろう。
さっきまで止まることがなかったマシンガントークがすっかり鳴りを潜めている。
ただここで黙っていては何も会話が進まないし、何より空気に耐えられない。
それに今の発言から丁度聞きたいことが見つかった。
「何個か聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「……!おう!」
話しかけるとすぐに明るい表情に切り替えた。
相手に悲しい顔を見せないようにしたり積極的に話しかけてくれたり、多分この人は良い人だ。
何となくわかる。
「えっと、まず君っていつごろからこの世界にいるんだ?」
「この身体が3歳くらいの時だな。あと君とかよそよそしいし今まで通りダイヤで頼むよ。」
「わかった……というか3歳!?」
今の俺たちは16歳だから……13年間はこの世界にいるってこと!?
超大先輩じゃん!?
「そうなんだよ。前世で僕は高校3年だったから精神的にはもう30代なんだよね。」
となるとさっきのハイテンショントークは若さゆえのエネルギッシュではなくシンプルにこの人が元気な人だったってわけか。
あれ?というか……。
「前世の記憶があるのか?」
「え?逆にないの?僕は前世でトラックに轢かれてこの世界に来たんだけど。」
マジか、しかもめっちゃ定番の異世界転生してやがる。
なんだよ俺と同じと思ったらかなり優遇されてないか?
やはり主人公だからだろうか?
ズルいぞチクショウ。
「俺は前世の知識はあるけど記憶がないんだ。あ、でもこのゲームをプレイしていた時の記憶だけは残ってるけど……。」
「ゲームの記憶だけあるの?なんで?」
なんでだろうね。
俺の方が気になってるよ、その点については。
「そっか、クレイはこのゲーム詳しいんだね。」
「まぁそれなりに。てかダイヤはあんまり詳しくないのか?OPとか知ってたしてっきりプレイ済みなのかと思ってたけれど。」
「あー……実はほんの少しだけプレイしたことある程度なんだよね。なんならこの世界がゲームだってことは師匠に教えてもらうまで知らなかったし。」
こういう作品への転生で詳しくない奴が転生することあるんだ……。
「そもそもあんなりゲームとかやらない人生だったんだよ。このゲームも前世の彼女にオススメされて始めたんだ。学園に入学するところまではプレイしたんだけどその後にトラックに轢かれて……。」
なるほど彼女の趣味だったのね。
というか本当に全然プレイできてないな。
学園に入学する前とかほぼステータス上げるための作業ゲーなのに……。
学園に入ってから色々なキャラクターが出てきて楽しくなっていくのに……。
「というかそんな知識でなんでそんなに高スペックなんだよ。」
「え?」
一応プレイ済みとはいえゲーム慣れもしていないのに何でそんな状態でAクラスに入れたのだろう。
「んー?多分師匠に色々と教わってたからかな?あと師匠曰く僕の持ってるスキルが相当いいものだったらしいんだけど……。」
固有スキルか。
この世界の住人は10歳前後で特殊な能力が覚醒することがある。
魔法は訓練することで様々なものを様々な人が使えるようになるのに対し、固有スキルは誰もが使える者ではない。
なんならそもそも固有スキルを得られるかもその人次第であり、得られただけでも相当ラッキーである。
ゲームでも低確率で手に入るもので、かつ能力の内容も完全ランダムという設定だった。
教会に行って能力の有無と内容を聞いて、何もなければデータを消して最初からやり直す。
良いスキルを引けてもステータスが全然伸びずに育成失敗してやり直す。
ガチ勢はこれを繰り返してやっと先に進めるのだ。
「ちなみに僕のスキルは『百戦錬磨』てやつらしい。」
「へぇ、当たりじゃん。」
百戦錬磨は簡単に言うと「戦えば戦うほど強くなる能力」である。
ゲームでは戦闘後の獲得経験値が増える能力だったかな。
直接的なステータスの変化などはないものの、ストーリーをプレイする中で自然とレベルが上がるのでゲーム中詰むような事がほとんどなくなる。
「当たりらしいよね!師匠も喜んでた!そしてそのまま森に連れ込まれた!」
「なんて?」
「森に連れ込まれて魔物とか野生動物とかと戦わされたんだよね。」
「スキルがわかってすぐに?」
「すぐに。」
師匠さん、スパルタが過ぎんか?
まだ10歳前後の子供の時から魔物とかと戦わせてたってこと?
何者だよその人。
まぁでも何となく現時点でここまで強い理由はわかった。
ゲームの世界だとそれらとの戦闘などは学園に入学してから発生するイベントだった。
それを幼い時からさせることで、本来ではもう少し後から可能になるレベリングをさせていたわけね。
「ね、ねぇクレイ?」
「ん?」
ダイヤが何かを言いたげにモジモジしている。
「いや……変なことを言うようだけどさ。改めて言いたいというか。」
「おう。」
なんか緊張していらっしゃる。
どうしたんだ急に。
「僕と!友達になってくれないかな?」
「は?」
もう親友では?
「クレイとは一応親友……ってことになってるけど、今回はクレイに言ってるというか中の人に言っているというか。」
親友ということになってる?
なんか含みのある言い方じゃない?
「実のところ、クレイとは気が付いたら親友ってことになってたんだ。僕はほとんど師匠と一緒にいたから会ったこともあんまりないはずなのに。」
えぇ……何それ怖い。
本来であれば親同士の仲が良く自然と引き合わされていたはずなのだが。
ダイヤの師匠のせいでそのイベントが飛ばされたということなのか?
しかしダイヤとクレイが親友になるのは既定路線なのでいわゆる世界の強制力的なのが動いたとか……?
まぁとりあえずダイヤの言いたいことはわかった。
彼は今、まぎれもない俺と友達になりたいと言ってくれているのだろう。
「なるほどね。いいよ。ぜひ友達になろうか。」
そうこたえるとダイヤは眩しいほどの笑顔を見せ手を伸ばしてきた。
俺はその手を取り固く握手を交わす。
この日俺は親友だった男と友達になった。
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