(仮)異世界果樹園
幟
第1話 異世界へ
高校を卒業後、親の反対を押し切って果物農家になった。これまでの貯金をすべて使い山と果樹を買って必要最低限の準備を行った。
桃栗三年柿八年と聞くが、俺が植えたのは林檎の木で4年の期間が必要なのだがその間無収入で暮らしていけるわけがないのでコンビニのバイトを始めた。
「は~疲れた。退勤まであと5時間もあるのか。」
深夜のコンビニ、都会や栄えた町であれば多くの需要があるのだが山の近くにある田舎の町ではそんな需要あるはずもなく来店する客は1時間に1~2人むしろいないことだってあるぐらいだ。
そんな状況ではやる気が起きるはずもなくカウンター横に置いてある椅子に座り頭を垂れる。
「先輩!商品の補充終わりましたって何やってるんですか!仕事なんだからもっとシャキッとしてください。」
「でもお客さん来ないじゃん。」
「そうですけど、そうなんですけど、こんな姿お客さんに見られたら今の時代動画を取られて一気に悪いうわさが広まっちゃいます。あそこのお店の店員は~ってな感じで!なのでフリでもいいのでもっとやってる感を出してください。」
「なんだよやってる感って!学生時代の発表会か!でも商品補充は終わったんだろ?。このまま朝日が昇るまで何もやることないぞ。」
「はー。毎日おんなじやり取りしてますね私たち。そういえば先輩の果樹園の調子はどうなんですか?」
「今年から身がとれるようになる予定だよ。だからもうそろそろこの仕事をやめようと思ってる。」
あれから4年たった。慣れない仕事に何度も体を壊しながら少しずつ今日まで進めてきた。土づくりから草刈り授粉用のミツバチの用意なんか手探りで始め、時には直接農家へ聞きに行くことだってあった。そしてようやく待ちに待った収穫ができる年なのだ。
今年ですべてが決まる。うまくいけば向こう数十年リンゴ農家としてやっていくことができるが失敗してしまえば闇の中だ。
「ほんとですか!もしうまくいったら私を雇ってくださいよ!いくつでも収穫しますよ。もちろん給料とは別で現物支給もよろしくです。」
「はは、そんな風にうまくいけばいいけどな~。でもうまくいったら声をかけさせてもらうよ。」
「絶対ですよ!忘れないでくださいね!」
~~~~~~~
バイトも終わり山の上にある家へと1時間ほどかけて自転車で帰宅する。毎日使う道なのだが時間や季節によって景色の見え方が変わったり動物が見れたりと意外に飽きることがなく、この時間を心の癒しとして活用できているので辛いと思ったことは一度もない。自転車なのはガソリン代がもったいないので家でお留守番中。
眠い目をこすりながらシャワーを浴びて軽く食事を済ませると布団の中へと一直線。目を閉じると何か考える間もなく意識が飛び夢の中へと入っていった。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
ドン!!!!!(グラグラ)
「うわ!!!」
突然の衝撃と揺れる家に飛び起きた俺は驚きのあまりその場から動くことができなかった。
地震だろうか?今の揺れで家の中にあったものが倒れたり散らかったりと大変なことになってしまった。余震の恐れがあるからひとまずは家の外に出よう。
急いで部屋を出ると靴を履いて玄関から外へと移動するとそこは地球ではなかった。
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