ACT2. side-志穂
学校に着いた頃には3人共息切れしてゼェハァと肩で息をしていた。
「おい志穂、上靴出せ」
私の目の前に靴を投げ出してくる葵君。
「何で志穂がそんな事・・・」
「俺は王子だからな」
「志穂、葵なんか放っといて行くぞ!アイツきっと馬鹿になったんだ。元から馬鹿だけど」
「志槻、なんとかしてよー」
「なんとも出来ない!」
「おい志穂!さっさとしろ!」
「志穂!行くよ!」
板挟みにしないでよー。
しょうがないから葵君の靴を下駄箱にしまって、下駄箱から上靴を取り出して葵君の前に置く。
フフン、と鼻を鳴らす葵君はやっぱり王様だ。
「志穂、ランドセルから教科書を出せ」
「それくらい自分でやってよぉー」
同じクラスの葵君。
志槻とは別のクラスだから廊下で別れた。
双子だからか、志槻と同じクラスになった事は一度も無い。
志槻はそれに不満を持っているようだけど、私は別にどっちでも良い。
むしろ、こんな風に変になっちゃった葵君と同じクラスな事の方が今は問題だ。
毎時間、私に授業の準備をさせる葵君。
給食の時間には、私に食べさせろとまで言って来た。
授業が終わると、朝のように私にランドセルを押し付ける葵君。
もういい加減、頭に来た!
「葵君なんて大っ嫌い!!!
志穂は王子様を待ってるの!!!
葵君なんてぜんっぜん王子様じゃ無い!!
今なら志槻の方がずーっと王子様みたい!!!!」
押し付けられたランドセルを葵君に押し返して家まで走って帰った。
「志穂!一人で帰ったら危ない!お母さんに怒られる!!」
志槻の声が後ろから追って来たけど、そんなの知らない。
今はとにかく葵君から逃げたくて仕方ないんだから。
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