元公爵家のアイドル、今世はデバフを乞う~俺だけ能力引き継いで現代最強〜
辛味の視界
第一話 元公爵家のアイドル、死す
みんなは輪廻転生という言葉を知っているだろうか。
少し、話をしよう。
この俺こと
そして、転生した俺は全く文化や文明の違う異世界で魔法使いとして世界に名を轟かせていた。
そんなことをしゃべっている俺は、今現在巨竜との戦いを終えて地面へ仰向けになっている。
そう、腹に大きな穴をあけたまま。
「た、隊長! 治癒魔法が使えるヤツを呼べ!! 大至急だ!!」
戦闘終了を確認してすぐに駆け寄ってくる部下。
俺……いや、私の隊の副隊長だ。
ははっ、こいつさっきまで前線張ってただろうに。さすがは私の部下ってところかな?
「私のことはもういい。私に人員を割いてその分助からないやつが増える方が私としては困るんだ。人は死に際には走馬灯を見るというが、どうやら本当らしいな。面白いものが見れた」
「……わかりました。せめて、最後まで俺にこうさせてください」
苦虫を嚙み潰したような顔をしながら、横たわる私の手を強く握ってくる。
ああ、こいつの手、こんなにあったかかったか? いや、私が冷たくなってるのか。
「……私が死んだら、お前がこの隊の長となるんだ。全員イイやつらだが、癖もその分かなり強い。けど、お前なら上手く率いることができるって信じてるからな」
「はい……隊長……」
「はっはっは、泣いてるようじゃまだまだだな。隊長という立場である以上、仲間の死にも多く立ち会うことになる。かくいう私も多くの仲間が目の前で命尽きる瞬間を目の当たりにしてきた。泣いてばかりじゃまともに戦闘なんてできないぞ?」
「わかり……っ、ました……」
零れる涙をなんとかこらえる様子を見て、ほっと息を吐く。
まだまだ精神面は発展途上だが、必ずいい隊長になる。それこそ、私なんかよりもずっと……
「隊長……? 隊長!! 隊長ー!!!」
そうして、私は意外にもあっけなく、けれど色んな人に見守られながらこの世を去ったのだった。
♢♢♢♢♢♢
うーん……俺は死んだ、はずだったのだが。
ここは……どこだ? うむむ、なにやら霊体にでもなったようだ。
辺りを見渡してみても、なんにもない。というか俺の浮いているところの、前から後ろに向かって空間ごと流れていっているような感覚がある。
なにもしていないと後ろに流されてしまう。昔から流されるというのはあまり好きでないという理由だが、その流れに抗ってみることにした。
最初の頃は霊体のような浮いた感覚というのもなれないものだったが、少しばかり時間が経つと移動もなにもお手の物といった感じになった。練習がいかに大切か改めてわかったような気がする。
スイスイ移動できるようになって鼻歌でも歌いながら(実際には歌えていないが)前へ前へと空間の中を泳いでいると、大きな扉のようなものが少し先に見えた。
今世の高貴な場所でしか見たことがないようなとても豪華な扉。なにもない空間に一つ浮かぶ扉に惹かれた俺はその扉を開いてみる。
ギィィと音を立てて開いた先はとても強い光の影響でまったく見えなかった。けれど、その先に入る以外の選択肢が俺には全くと言っていいほど浮かばなかったのだった。
「ふふっ、ここから先はあなたも知らない別の世界の物語。あなたは、世界を救済へと導くことができるかしら?」
俺が扉に入ると同時に放たれた声に、俺が気づくことはなかったのであった。
♢♢♢♢♢♢
朦朧とする意識のなか聞こえてくる声はどうやら俺のことを心配しているみたいだ。
ここは……なんだか、見覚えがあるような。
「ライカ!? 大丈夫!?」
「ん……? 俺は別に、なん……とも……」
誰だ……? こいつ。俺のこと心配してくれてるみたいだが。
ふらふらしてる俺を見てか、周りの人がぞろぞろと集まってきている。誰だかわからないが、心配してくれてる人もいるみたいだし、とりあえずこの場を離れよう。
♢♢♢♢♢♢
「ね、ねぇライカ! 大丈夫なの? まだちょっとフラフラしてるみたいだけど!」
「あ、ああ。なんとか大丈夫だ」
「……ほんとに大丈夫? しゃべり方変わってない?」
「ちょっとめまいがしててね、気にしなくていい……よ」
やっぱり違うか、この喋り方! 異世界にいたときは男っぽい喋り方でもいけてたから女の子っぽい喋り方なんてわからんぞ!!
あと気づいたことだが、ここは一番最初の川越理人のときの世界と時間軸は違うかもしれないがほとんど同じの日本で、俺が……私が今いるところは高校とみて間違いないだろう。
そして……これではっきりした。俺は――
――二度目の転生をしたみたいだ。
次の更新予定
2024年12月18日 11:00
元公爵家のアイドル、今世はデバフを乞う~俺だけ能力引き継いで現代最強〜 辛味の視界 @yozakuraice
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。元公爵家のアイドル、今世はデバフを乞う~俺だけ能力引き継いで現代最強〜 の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます