第3話 カーアイ島のマーケットと、モンラブン山のマーケット

二泊三日のホームステイ御一行は、

マーケットにやってきた。


広場につくと、

一人のお祭りピエロがカラフルな風船をくれた。


これから、近くの商店の開店祝いだそうだ。

ほう。

一人ひとり礼を言わせ、

集合写真を撮った。


おや、

サヤナはドレスじゃないか。

シオンのやつ、変えてやったのか。

意外と気が利くじゃないか。成長したな。

かわいらしい三人娘。

レンは役得だな。ふふ。


ミラン、サーナ、ロウ、クールーは、

おそろいの緑と金のドレスだ。

チームエルフだったか、

スコート姿も似合ってたが、

アロハンシャツも可愛らしいな。

おそろいっていうのもいいもんだ。


それから、

ナッジ、ビワ、ソウト、ラン、

あいつらは、なんだ!

端っこでもじもじして。

白や黒ばっかりだ。

中2だな!

「ほら、もっとこっちに来い!」


俺は、みんなが映るように、

みんなを真ん中に寄せた。

エルザはそうだな。

俺の隣にしておこう。

そしてレンの隣だ。

老巫女さんにアピールしなきゃならん。

ポーラは、挟むようにして向こう側。

言わなくても、バチッとくる絵が浮かぶし、

ポーラとは息ぴったりだ。


お祭りピエロの、

彼がいてくれてラッキーだった。

俺も写真に入れる。

まてよ?彼も画角に入れたいな。

馴染みのマーケットの店主に頼んで、

ピエロも写真に入れてもらった。


「はい、チーズーー!!」

ぱちり。


うん。いい画が撮れた。

礼を言って、また飲みに行こうと誘った。


そして、

さらさらと魔法封書を、

老巫女さんとこへ飛ばした。

写真を見りゃわかる。エルザは元気だぞーっと。


みんな、それぞれマーケットを楽しんでいた。

前回、気に入ったんだろう。

雑貨店や、パン屋、ドリンクスタンドに行くのが見えた。

出た、ぶどうソーダ。

シオンの推し活グッズらしい。

森の神殿が開発した商品だ。

闇の竜界隈でも、流行ってるらしい。

ノーザンクロスのシオンの、デスボイスは、

アイツラ向きだったんだな。


いやあ。


あいつはやっぱり、

天性のお道化だ!!




少女たちといっしょに、きゃっきゃとぶどうソーダをシバく、

十四才のポーラを見ていると、

昔を思い出す。


十三のミルダのことだ。

彼女が、それを覚えているかはわからない。


再開したときには、

お互いに変容の扉をくぐったあとだった。

アトラスおれは紫のチビ竜。

天文台の、スーパーキッズだった。

正確には、

シリウス劇場の劇団員なんだけどな。


カーアイで二人が出会うなんて、

思ってもみなかったから、ホントにびっくりした。

会ったときはどきどきしなかったと言ったら、

そりゃ、嘘になる。


イモ畑の闇の竜にさらわれかけて、

デコイを用意するのに懸命で、


それどころじゃなかったのが、

かえって良かったかもしれない。



まてよ。

呪い紙ごしとはいえ、

あっさり、俺に腹を吹かせたよな、あいつ。

俺がちび竜だからか?

旧知の仲だからか?


どっちだ??

うーん。

わからん!



  


繰り返し、

デートした仲ではあるんだ。


俺は二十代後半だったけれど、

あいつも、ずいぶん大人びた格好をしてた。

ポーラのセンスだろう。


コートは着ていたが、

短パンで足もへそも、肩も出まくりだった。

若いよな。

化粧も上手にしていた。

夜のマーケットにいたから、

一見キッズだなんて、わからなかった。

もともと、綺麗な顔立ちなんだ。

国中の乙女の代表。

その中の伝説カリスマなんだ。


紅玉の瞳だって、

剥き出しだった。

銀の髪はうっすらピンク色だった。

みんなが振り向く。

格好がまるでちがうから、

まさか、姫巫女さまとは誰も思わないだろうが。


俺の目的は、

ナンパだったが、

あれは、

はっきりいって、

心配が勝って、

ボランティアで声をかけたようなもんだ。


俺の好みは、もっと歳上だ。

シッターさんや、ナースさんのような…。

な?


魔法封緘も放たないような、

十三のガキンチョ、

興味持てるわけがない。


あわてて、

夜だってのに、サングラスと、

薄着だってのに、もこもこの帽子を買い与えた。

そして、年相応の格好をさせた。


そういう、

目立つ自分に無自覚なところは、

相棒のシオンにも似ていた。


だから、

こっちも対応に慣れてたのかもしれない。


ミラーボールがごろんごろん転がってるんだ。

見るなというほうが、

どうかしてる。

そうだろ?

周りに合わせなきゃな。




そしてすごく、

変だった。

わかるんだ。

この子は、二人混じってる。

ガワは同じでも、無理がある。

服が違う、化粧が違う。

話す内容だって。

二重人格ってやつとも違う。

たまにやってくるゴーストのポーラは、

最高にイカしてた!!

そして、本体は別にあるって、確信があった。

だからカマをかけて、別々の名前で読んだんだ。

ポーラの方は芙蓉ふようを名乗ってたが、

そうでないほうを俺は、

「なあ。ミルダ!」と読んだ。

竜を見る目が素敵な女だったからだ。

渾名ニックネーム

彼女は平然として、そのままにっこりとミルダを名乗った。それで俺は確信した。

あいつは嘘が多いんだよ。俺もだけどな。


それはそれとして。

素のミルダは、

すれ違う、ちび竜を見る目が凄く良かった!!

あったかいんだよな。

人情があるんだよ、あいつ。


その頃の、

シオンは竜なんだ。


でさ、

変だと思うけど、

俺はぴんときた。


この子が、

俺の相棒シオンの嫁さんになってくれたらいいな!!

ってさ。


なんつーか、

どかーん!!と雷が落ちた。


モンラブンなんて、

年に一回行くか行かないかの、

寄港地だぜ!?

でも、そうだったんだ。

運命を感じたんだよ。


いつか、

ゴーストの本体である、

最高にイカしたこっちの女を嫁さんにして、

ミルダは、相棒シオンの嫁さんになって、

一緒に式を挙げたい!!

そう、思ったんだ。


竜も人もごちゃごちゃだし、

あり得ない光景だぜ?


でも、

今ならあり得るんだよ!!


竜の人化。

人の竜化。

半人に、転生まで、

今やこの世界は、何でもありだからな。


だから、

俺は、俺のこの嗅覚を信じて、

これからも生きていくだけだ。

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