第42話 不意打ち
キンッ
甲高い金属が辺りにこだまする。
「うぉ、さっきより強いな」
「(もう夜明けだ、あと少し粘れ、そうしたらきっと助けが来るはずだ)」
相手に攻撃させる隙を与えないように、猛攻を仕掛ける。
「ちょこまかと鬱陶しいな!」
「素早さが売りなものでね!」
「でもキツイだろ、半分凍った体を動かすのは、なんなら、体温で溶けてるじゃねぇか」
凍らせた傷口が溶け血が噴き出す。
「チッ(落ち着け、溶けたそばからもう一度凍らせろ、少しでも多く時間を稼ぐんだ)」
「もうそろそろ、鬱陶しくなってきたな」
男がバックステップで距離を取る。
「もう良い、本気出すわ」
「そんな隙を与えるか!」
左腕から六角を取り出し、男に投擲する。
キンッ
「小賢しいな!」
また日本刀で弾かれた。だが、僕はその隙を見逃さない。
「また懐取ったよ」
「だが甘いな!」
それとほぼ同時に男の横薙ぎが飛ぶ。
ズッー
スライディングでそれを避け、ナイフで足の腱を狙う。
「もうお前二足歩行やめろよ」
「それも読んでるよ!」
男が履いていた下駄を脱ぐと、鋭い鉤爪が生えてきた。
「まずい」
体を捻り、斬撃を躱す。しかし…
「チッ、クソが」
鉤爪は左目の上をハスっていた。流れ出た血液により片目の視力が無くなる。
「今ので頸動脈を切れないのか、運の良い奴め。でも、片目じゃあ、もう俺には勝てないな」
「うるせぇ、ちょうどいいハンデだよ(早く止血しないとな、流石に凍結は眼球にダメージが行くからダメだ)」
その時、一つ気になっている事が頭の中をよぎった。
「そう言えばお前、僕と同じ流派のはずなのに、なんか微妙に技の形が違ったぞ?本当に、天宮家の人間か?」
「さぁな?」
「もう良いだろ、死に行く人間の問の一つや二つぐらい聞いても」
少しの沈黙が走った。
「ソレ、お前が俺より弱いって認めたって事で良いのか?」
「あぁ、良いよ、ソレで。片目の視界も無いし、止血しないともうすぐで動けなくなる上、左腕も折れかけている、もう勝ち目なんてねぇよ」
「フッ、フハハ」
「なにが面白い」
「いや、実に滑稽だなと思って。良いよ、教えてやる。俺の名前は雨宮 真(あまみや まこと)、お前の苗字とは違う雨の方の雨宮家の人間だ、つまり分家の人間だな。だから、お前の知ってる天宮流は使って無い、俺が使ってるは天宮流派生型の雨宮流だ」
「(紛らわしいな、そう言えば言ってたな、分家の人間もいるって。まぁいい、今のコイツは隙だらけだ、今なら行ける)」
自分の中の疑問が全て繋がった。それと同時に、左腕から六角を2本抜き、雨宮に投擲する。
「うぉ、この卑怯者が!」
「ついでにこれもどうぞ」
スペツナズナイフを抜き、雨宮に向かってナイフを発射する。
キンッザシュ
雨宮は六角に気を取られ、ナイフを弾く事ができなかった。
「(狙い通りだ)」
そのまま、距離を詰めにかかる。
「あと、ついでにコレもどうぞ」
頭上に大きな氷柱ができる。
「朝露を地道に集めてたんだよな!」
「(クソが、後ろじゃ間に合わない、前に出るしか無いな)」
「(予想外を作りに行け)コイツはおまけだ!」
持っていた、カランビットナイフを雨宮に向けて投擲する。
「マジかぁ!」
雨宮はソレを弾く事ができず、汚い体制で避けた。
「隙だらけだ」
そのまま、掌打が突刺る。
ドォン
「マジかよ、良く耐えるな」
雨宮は吹き飛ばずに、そこに立っていた。
「甘いな、このまま叩き切る!うぉぉ!!」
しかし、刀が落ちてくる事は無かった。
「あ……れ?」
「体が脳の指示を聞いてねぇな、お前の負けだ」
手錠を取り出し、雨宮に歩み寄る。
バサァバサ
「なんだ、この羽音は」
背筋に冷たい物が走った。
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