第29話 危機一髪

「……きて」

「永………きて」

「(誰だ?)」

「永夢くん、起きて」

「は?(なんか、懐かしい気がするな、この声)」

「永夢、起きないと、………ぞ」

「雪…さん?」

「永夢、起きないと、死ぬぞ!!」

 この声がで目が覚めた。

「ハッ、ここは?そして、皆は何処だ!」

 混乱している頭で目を瞑り今の状況を整理する。

「(確か、喜太郎の馬鹿がフラグ発言をして、誰かが操っているカラスの群に突っ込んだのか、そのままバードストライクを起こし、ここに不時着したのか)」

 そう考えをまとめていると頭上から声が聞こえた。

「おーい、生きてるか!!」

「あぁ、今起きた所だ」

「なら良かった。って、そう言う場合じゃない!早くそこから出ろ」

「え?何で?」

「永夢良いか?落ち着いて聞け、そこは崖に生えている木にひっかかったヘリコプターだ」

「ん?え?」

「良いから早く脱出しろ!」

「脱出しろって言われても、うぁー」

 機体が大きく揺れた。

「(流石にコレは死ねるな、さぁどうしようか)」

 周りを見渡し、頭をフル回転させる。

「(真左にあるドアは歪んで開かないな、蹴り破る事は可能だが、その時の衝撃で木が折れたら一巻の終わりだ。なら、答えは一つだな)」

 そして、僕が目を向けた先には。

「(運転席のドアだ、あそこなら開いている)」

 しかし、運は僕を味方してくれないみたいだ、次の瞬間。

 ドォーン

「チッッ、時間が無いな、クソが!!」

「おい!永夢早くしろ!外に出たら、すぐそこにロープがある!」

「あぁ、ヤバイ、ヤバイ」

 必死に体をねじり、前に進む。

「よっしゃぁー!」

 ドアの枠を掴み外に出ようとする、しかし。

 ドォン、ガタァーン

 それとほぼ同時に視界が大きく傾く。

「マズイ、マズイ!間に合え僕!!」

 外に飛び出し、ジャンプしてロープを掴みに行く。しかし、ここでも運は味方してくれなかった。

「あ!ヤバ、コレ死んじゃうヤツだ」

 ギリギリの所でローブを掴めなかった。

「永夢ーー!」

「チッ、死んでたまるかー!」

 右太腿のホルスターから、五十嵐先生から返してもらったフックショットを抜く。

「僕あれから太って無いよなー!」

 そして崖の上のに生えている木目掛けてフックを発射する。フックが綺麗な放物線を描き木に突き刺さる。

「よっしゃー!」

 そのままトリガーを引き、体が上に引っ張られる。

「よっこらしょと」

 僕は見事、窮地を脱することに成功した。

「青木、皆無事か?」

「海智さんの右足が折れてる見たいだ、それ以外は全員軽傷だ、お前こそ大丈夫か?」

「あぁ、ちょっと頭痛がするだけでそれ以外は特に無い」

「応急処置したいから手伝ってくれ」

「いや、それは辞めといた方が良い」

「何でだよ?」

「僕らは誰かに操られたカラスにやられたんだろ?ソレならトドメを刺しに来るはずだ、僕ならそうする」

「言われてみれば、そうだな」

「少しでも良いから、ここから離れよう」

 青木が海智さんに肩を貸し、僕らは歩き始めた。



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