灰色の蝶についてのレポート

観測中に興味深い物体を発見したんだが、まさか君の知り合いじゃないよな?

一応報告しておくが、まあ君の知り合いなら聞き流してくれ。……君の貴重な時間を貰う埋め合わせは、また今度何かで返すから。


発見したのは灰色の蝶々だ。激戦の結末に惹かれるように、各世界の最後に飛来している。目的は不明。意思のある存在なのかもよく分からない。ただ、挟域次元門、エラン・ヴィタール、追憶の深窓、零獄にすら飛来する辺り、かなり強力な存在であることは、俺でもわかる。

いくらバロンたちが圧倒的なスタミナとパワーを併せ持つと言えど、疲弊ぐらいはする。その隙を狙えば、一応イニシアチブは取れるだろう。だがこの蝶々は、ただ眺めるだけで飛び去っている。交戦や吸収、漁夫の利を取りに行くわけでもないらしい。

アルヴァナにも、原初三龍にも知られていないような存在がいることくらいはわかるさ。世界は広いからな。だが、その手のヤツと言えばトランペッターの正体くらいだと思ってたんだが、今回の件で変わったな。


君にとって大概の事が些事とは言っても、俺としてはこいつの正体を調べた方がいいと思うね。最初にも言ったが、君の知り合いなら、気にしなくてもいいんだが。


P.S.そう言えば蝶々ってのは〝夢見鳥〟とも言うらしいな。夢とか、魂……隷王龍ソムニウムも、夢に由来する名前だよな。俺はそっちの線が……ユグドラシルの作った何かなんだと踏んでる。ま、知ってるならこれも聞き流してくれ。

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