第15話
都合の良いセフレにしておけばよかった。
僕達は夜ごと愛を深めた。隠れて愛し合うスリルに僕は
しかしだ、不満を口にするかしないかの違いだけで、案外僕達は似たもの同士だったのかもしれない。
僕からすればシンプルに助言のつもりで言ったのだったが、彼女からすればセンスを否定されたように聞こえたのであろう。
「つぎの休み、街に洋服買いに行こうか?」
それは大胆な提案だった。実在定かならざる彼女をシェルターの外へ連れ出そうと画策したのだから。
「誰の?」
「もちろん君のさ」
言っておきながら僕の頭のなかでとぐろが巻いていた。実在する服を実在定かならざる彼女に着せた場合、それはどうなるんだろう。だが、そんな不安以前のことだった。僕はまたしてもやってしまった。
「肩がそんな張ったコート着ている人、いまいないよ」
「それどういう意味?」
「何よ、まるで私が遅れてるみたいな言い方ね」
しまったと思ったがもう遅い。取りなしは効果ゼロどころか彼女の
「そんなこと言ってないよ。もっとマリーを綺麗に見せる服があるんじゃないかと思って言ったまでのことだよ」
「これのどこがいけないの!」
「いけないことはないよ、似合ってる。ただね」
「先週買ったばかりよ!」
「うん、そうだね。素敵だとは思うよ」
「何がダメなの!ひどいじゃない!私否定された」
(あーあ、やっちゃったかな)
「もう死にたい」
こうなると僕には手がつけられない。自分で引き起こしておきながら収束できない自分を情けなく思う。そしてこんな時、昔もいまも僕はこうしか言えない。
「ごめん。ごめんよ。僕が悪かった、許してくれマリー」
するとどうだろう、イリュージョナブルも外していないのに、彼女の姿がプツリと消えた。こんな終わり方は初めてだった。
イリュージョナブルを外して、もう一度掛け直した。しかしヤングマリーは現れなかった。何か不具合が起きたのだろうか? いや起きたならそれでもいいだろう。あの修羅場に戻りたいとは思えない。これまでだって似たようなことだった。密会の終わりは彼女の
よって、いまここに彼女がいないことは僕にとってそれほど大事ではなかった。
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