第9話
マリーの父親よりずっと頭の固いうちの父と母の同意を得られぬまま、僕とマリーは
二人に子供がなかったことも、過ぎた昔への
加えて仕事でも孤独な位置に立たされていた。会社での地位は課長だったが、部下や同僚の間に挟まれて言いたいことも言えず彼らの権利主張ばかり聞かされてうんざりしていた。誰も彼も皆、口を開けば自分の
何より大きく変化していたのは、僕のマリーへの愛だ。自分の親の反対を押し切ってまで一緒になったマリーに、僕はかつての愛の原型を見失っていた。
そんなことは珍しいことじゃないというだろう。世間でよくある話だし。長年連れ添った夫婦の愛の形が結婚当初そのままであろうはずはない、と僕も思う。
まれに新婚当初より仲良くなったという夫婦の話も耳にするが、どこに愛を感じているのかよければ教えてもらいたい。それは愛ではなく友情のようなものなんじゃないか? 或いは結婚当初、
いまではマリーの肌に触れることも、愛を語ることも、デートに誘うこともない。仮に僕がなんの
ただ誤解を恐れず言うと、僕から別にマリーを嫌いになったわけではない。愛が失せたことと嫌いは別の意味だ。
嫌いじゃないのに、でも愛を感じられないのに、一緒に暮らすということはどういうことだろう。
翌朝、目が覚めると僕の隣にマリーが、あの頃の
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