第3話

 恋に狂った僕はどこでどう手繰り寄せたか、工能知人くのうともひととかいう奴にこの恋煩こいわずらいの相談する。

 すると工能知人は僕にこんなことを言った。


「なるほど、この頃のきみの奥様に会いたいんだね。それじゃあ、きみの奥様に関する写真や文字などの記録媒体と遺伝情報を持ってきなさい」と。


「遺伝情報はできるだけ新しいものがいいね。たとえば床に落ちた髪の毛とか、切った直後の爪とかね、もちろんきみのじゃなく奥様のだよ」


 疑うも疑わぬもない。そう言われれば言われたとおりやるだけだ。僕は彼女に隠れてできるだけたくさん彼から言われた情報をかき集めて(遺伝情報は床から髪の毛だけでなく風呂場から陰毛まで採取した)これらをめでたく工能知人くのうともひとに渡した。

 もちろんあの僕を狂わせた写真も複製して彼に渡しておいた。


 彼は言った。

 

「上出来だよ」


 僕は工能知人を前に柏手かしわでを打って願いが成就することを祈った。

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