第39話
恐怖と
事が済むと、男は傍らの小刀を引き寄せ、陵辱と血に
後には彼が
雄吉は千鶴を-孤独-から解放する、を諦めた。・・・いいや違う、そんな意識的なものではなく千鶴に手が届かなくなったのだ。近づく手段を絶たれた。気づけば彼は、職を失い、衆愚を疎んじ、愛し方を忘れ、自信を喪失し、何もかもすっぽりと世界から隔絶してしまった。社会のせいにしたいが、もともと自分にその真性があったことを彼は今になって気づく。千鶴と接点のない併行する暗闇に彼もまた小さな
そこでの
フェイクニュースで溢れているサイバー情報ではあるが、雄吉はこの男の犯行のひとつを正常らしき両の
彼の記憶に刻まれていた最後の彼女の像は、右の瞳が大きく
確かめに行かなければ。 ・・・何のために?
あなたのひとみは・・・
だれをみているの?
どこをみているの?
なにがみえているの?
雄吉があの
初めてここを訪れた時、彼はタバコを求めた。自動販売機にそれがなく苛ついた。いま彼は皮肉にも世間と離別しているのに世間がタバコを捨てる慣習と歩と同じくしている。欲しいものが手に入らぬ苛つきはなかった。だが、千鶴のいる対面販売のガラス窓にまで足を踏み込めなかった。既知情報とはそんな風に人を逡巡させるのを面白がっている。そこにはもう彼を威嚇する尨毛の醜眼もいないのに。生体認証を取らせてもらう役割も大義もない彼には、路傍から家の中を覗き込む程度の
そこで彼はやっと気付いた。自動販売機の明かりが全部消えていることを。毀れた家の壁に「
雄吉は暫し黙って張り紙を見つめていた。ふと遠く向かい角の交差点まで眼を凝らすと、
(
雄吉は、彼女の外斜視を愛おしく思い浮かべ、手にあった
了
Yin & Yang 改題 引&用 水無月はたち @iochan620
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