第26話

 また雄吉は時をわせて想うのだった。あの日自分が買い求めたタバコ以来、誰がこの窓越し彼女と接触しただろうかと。

 誰も来ない対面販売と多くの客が来る無人店舗。凹凸を逆さにすればこの二つはもしかしたら同じ宇宙で同義として係留けいりゅうされているのかもしれない。違いすぎる共通項には似た部分が存在するのかもしれない。

 そうであれば、そうあれかしと雄吉は祈願する思いで手にした【暫定】共通項を窓越し差し出した。彼女が受け取ろうが受け取るまいが、彼は置いて帰るつもりだった。

 腰を屈め雄吉は声を捻り出した。

「これさえあれば、欲しい物を自動的に選んでくれてなんだって買える。喋らなくても念じるだけでぜんぶ伝わる」

 そういって雄吉は自分名義で作ったもう一台のイデアポウン・・・・・・を、接客台に静かに置いた。

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