第17話
この頃から、彼女は言葉を話せなくなった。思っていることを声に出そうとすると喉の奥に大きな
唯一の人との交わりは、母がタバコ屋を営んでいた時から月に一度来てもらっているタバコ仕入れ業者の商品納入に限られた。されどこれとて言葉は不要だった。というのも千鶴は買い入れるタバコを紙に書いて業者に渡していたからである。飲料水の自動販売機も委託業者が定期的に商品が少なくなれば補充しに来てくれた。並べる商品も業者に委ねていた。設置当初から場所を提供するだけの契約だったからである。こういったことからつまり彼女が業者とさえ言葉を交わす必要はなかった訳である。因みにこの時分に彼女は対面販売を謝絶し手交する窓口をカーテンで封鎖していた。彼女の生活を支えていたのはまさに
誰とも話さない、話す必要がない暮らしの中では、
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