第12話

 この旅で彼は彼女と放蕩三昧ほうとうざんまい愉悦ゆえつで重ね塗りした日々を過ごしている。

 が、次の年の渡航とこうではその彼女と会わず別の女の子と枕を共にしている。

 イタリア語も前より上手くなっていたので、Ragazza(オンナノコ)を捕まえるチャンスが増していたと考えたからである。

 要するに例え居心地が良かろうともリフォームできる住まいを小さいまま留めたくなかったのである。

 

 当時、彼のウィットにんだ話芸わげい(その多くの源泉は日本の落語から引用していた)はイタリア語という枠を超えて万国で通じる妙技みょうぎに達していた。おそらく英語でやっても彼はガールフレンドを増やせただろう。

 彼流のコミュニケーションの極意とは、「引っ込まない」、「笑わせる」、「大袈裟に動く」、「有益な情報をもたらす」、の4つだった。

 こうすれば人はほっといても雄吉の周りに集まってきたし、下手な語学でも相手の方が多めの努力で雄吉の言うことを理解しようとしてくれた。

 

 英語圏には渡りはしなかったが、母校の留学生たちと誰よりも上手くけ込むことができたので、英語を主で彼らと交流を深めた。

 そこでも、You're funny!  と彼らから好意的評価をもらい、雄吉は陶酔とうすいに身を欲しいまま預けた。


 時のグローバル人材・・・・・・・とは自分のような異文化に挑戦的で機智きちんだ者のことだと彼は盲目的もうもくてきに自己をまつり上げた。

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