Yin & Yang 改題 引&用
水無月はたち
第1話
そこは埼玉県に出張ったN区の飛び地に棲み溢れていたタバコ屋である。取り囲む
路傍から生え出て横陣に構えた5連の自動販売機たちがここの主の
彼女の名を
いまここにタバコを買い求める若い男が自動販売機を右端から丹念に眺めている。スーツの背中のシワを伸ばしゆっくりと
「おんなじようなのばかり並べやがって」
お目当ての商品がなかったらしい。仕方なく彼は前線の煌びやかな堅塁から踏み入って千鶴の棲む哨戒地に足を進めた。
彼の名を
屈んだ雄吉はグレイの縞模様のネクタイを前で揺らしている。そこだけフォーカスしてみれば平べったい乾いた象の鼻のようである。雄吉はガラス越し部屋の中を覗いた。
「やべ、やべえ」
苛立ちが一転、薄気味の悪い怖気にすり替わった。ザリガニみたいに腰が引けた。そこにはマネキンと
(生きてんのか?)
そう雄吉が疑うほど中にいる人物からは生命感が伝わってこなかった。近頃目にする人間そっくりなロボット、そうだとしてなんら不思議に思えない。が、すぐに考え改めた。そんな先進的テクノロジーが時代に見捨てられたようなこんな
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