第42話 試行錯誤の中で

新しいプロジェクト「四季の展示」が始まり、私たちはそれぞれのテーマに基づいて作品づくりに取り組んでいた。しかし、順調に見えた準備も、次第に課題に直面し始める。


「これ、何か物足りない気がするんだよね」と美香さんが、自分の刺繍作品を見ながら言った。彼女が作っていたのは春の花をモチーフにしたデザインだったが、どこか平面的に見えてしまい、どう改善するか悩んでいるようだった。


「色の組み合わせを少し変えてみるのはどうかな?」と私は提案した。「もっと明るい色を加えると、春らしい鮮やかさが出るかもしれないよ。」


「なるほど!ちょっと試してみるね」と美香さんは明るく答えたが、その表情にはまだ少し迷いが残っているように見えた。


一方、咲子さんも苦戦していた。彼女は秋をテーマにした布小物を作っていたが、落ち葉のモチーフがどうしてもしっくりこない様子だった。


「……こんな風に色を重ねるのって、難しい」と彼女はため息混じりに言った。


佐藤さんがそれを聞き、「色を重ねる時は、少し濃い色をポイントに入れるといいかもしれませんよ」とアドバイスしてくれた。彼の優しい言葉に、咲子さんは「……やってみる」と小さく微笑んだ。


私自身も課題を抱えていた。冬の静かな雪景色を描こうとしたが、どこか単調になりすぎてしまい、「これじゃあ、ただの白いページみたいだな……」とつぶやいた。


「だったら、そこに物語を感じさせるようなものを加えたらどう?」と美香さんが提案してくれた。「例えば、雪だるまや鳥の足跡とか。」


その言葉に、私ははっとして「いいアイデアだね!ちょっとやってみるよ」と答えた。


試行錯誤の中で、私たちはお互いのアイデアを出し合い、少しずつ作品を形にしていった。課題にぶつかるたびに、仲間と話し合うことで新しい解決策が見つかる。その過程は、私たちの絆をさらに深めていくものだった。


ある日、作業が一段落した時、咲子さんがぽつりと「……前の私なら、ここで諦めてたと思う。でも、皆がいると、もう少し頑張ってみようって思える」と言った。


その言葉に、私と美香さん、そして佐藤さんも「そうだね」とうなずいた。私たちはそれぞれが持つ悩みや不安を共有しながら、共に進んでいける仲間になっていた。


帰り道、美香さんが「次に集まる時には、もっと進んでる気がする!」と元気よく言い、咲子さんも「……皆と一緒なら、きっといいものができる」と静かに答えた。


私はその二人の言葉に背中を押されるような気持ちになり、「そうだね。これまで以上に素晴らしい展示にしよう」と決意を新たにした。


春の風が暖かく私たちを包む中、新しい挑戦に向けた試行錯誤が続いていた。それは困難も多かったが、私たちが共に歩む中で、確実に未来への道を切り開いていると感じていた。


次に完成する展示は、私たちのこれまでの努力と絆の証になるだろう。その期待を胸に、私たちはまた一歩を踏み出した。

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