第4話

「おめでたい?なにかあったの?」




おめでたい?なにが?




思い当たる節がなにもないから、私はその言葉に頷けない。





起きて早々そんな台詞を聞いたのは今日が初めてで、八重さんがにこにこと心の底から嬉しそうに笑っているのを見るのは、久しい。




なにか良いことがあったのだということは彼女の表情を見ているだけでもなんとなく分かった。伝わった。





「なに?八重さん、なにかあったの?」


「…撫子様、ご存じないのですか?」


「思い当たる節が無いわ」


「そんな、まさか」


「なんなの?教えて頂戴よ」


「いえ、でも、もしかすると言ってはいけなかったのかもしれません」


「いいじゃない。おめでたいことなんでしょう?私だって知りたいわ」




私が「なに?」と問いただすと急に八重さんの表情が曇り始めた。



最初は寝ぼけているのですか?なんて私を疑っていた八重さんも、本当に私がなにも知らないことに気付いたらしく少し困ったような表情を浮かべている。



終いには「言ってはいけないのかもしれない」なんて言うものだから私は尚更その内容が気になって仕方がない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る