第7話:アンダーアス基地攻略作戦

 アール指揮の下、セルバンテスは間もなく、アンダーアス基地の索敵範囲に入ろうとしていた。

 陸戦隊もギリギリの場所でスタンバイし、レイン達も格納庫で発進準備を待っている。

 こうなれば、あとはセルバンテス次第で作戦が開始される。


「さて、我々も仕事をせねばな……各員、やるぞ!――セルバンテス! スカイミラージュ展開!」


「了解! 展開開始!」


 ブリッジにいる者達は、アールの指示と共にシステムの操作を開始。

 それと同時にセルバンテスの姿が、透明になった様にその姿を消した。


「ステルス機能も問題なく機能! スカイミラージュ展開終了!」


「各砲門! 全展開準備完了! いつでもいけます!」


「流石に近くで見られればバレるが、それでも何故、セルバンテスが万能戦艦の名を持っているか教えてやれ!」


 透明となった――様に見せているセルバンテスは、ステルス機能を使用し、エンジンを最低限にしてアンダーアス基地へ移動していく。

 

――そして基地が目の前となっても、敵からの反応はなかった。


「敵からの反応なし!」


「良し! 全砲門開け!――AS部隊! スタンバイだ!」


『こちらはいつでも行ける!』


 アールからの言葉に、レインは通信で状況を知らせ、それを聞いてアールは頷いた。

 そして基地の真上に来た所で、ようやく敵方は違和感に気付いた。


『あれ? なんか空が変じゃないか?』


『何がだ。空がどうしたって……?』


『いや、空が様な……!』


 それはセルバンテスのスカイミラージュ状態の姿だった。

 近くで見れば、歪んだ様に見えてしまうが、ここまで潜入すればバレ様が関係なかった。


『お前、飲んでないだろうな?』


『いや飲んでない! やっぱりおかしいぞ! すぐに知らせろ!』


 基地のほぼ真上にセルバンテスが到着した頃になって、ようやく気付いたAS部隊は忙しなく動き始めた。

 だが、まだ警報はなっておらず、先にアールは動いた。


「今更気付いても遅い! 全砲門開け!――目標! 敵AS及び、防衛兵器! AS部隊や陸戦隊に楽をさせてやれ!」


「了解! ビーム・実弾、各主砲・副砲・ミサイル・各機銃――全発射!!」


 ブリッジの言葉と共に、主砲等が一斉に基地の地上へと発射された。

 それと同時にセルバンテスが、アンダーアス基地の空へ姿を現した。


『なっ! 巨大戦艦!? マズイ! 既に敵は――』


 その言葉を最後に、地上のASは主砲によって消し飛ばされた。

 同時に次々と地上の対空兵器や、戦車・装甲車が吹き飛んでいく。


「今だ! イーグル隊発進!」


 アールの言葉によって、レイン達イーグル隊も、AS戦が始まろうとしていた。


♦♦♦♦


『イーグル1! 発進どうぞ!』


「イーグル1――レイン・アライト! イーグル出る!」


『イーグル2 発進どうぞ!』


「イーグル2――カレン・レッドアイ! エクリプス! 行きます!」


 ブリッジからの言葉に応え、レイン達は一斉に空へと飛び上がって行く。

 特にレインとカレンは、新型のビームガンを持たされていた為、一気に行動に動く。


 それは18メートル級のASと、長さだけなら同じぐらいの大型ビームガン『カタストロ』を右腕で担いでの発進。


 短いシミュレーションでしか経験していないが、レインとカレン空へ出たと同時に地上の兵器へ、カタストロを放った。


「ASか対空兵器を狙え!」


「了解!」


 イーグルとエクリプスは、互いに別方向へと飛んでいき、地上へカタストロを放つと、まだ混乱していた敵ASアウィスを一撃で消し飛ばした。


 そして、一回の射撃は長く照射でき、そのまま銃口を動かして両機は地上を蹂躙する。


「凄い威力……! でも反応は鈍い。接近戦は注意しないと。――そうだ! ガルム中隊は!?」


「ブリッジ! 中隊の情報を知らせ!」


 カレンとレインの声に、ブリッジは急いで索敵するが基地内にはガルム中隊の反応はまだなかった。


『ガルム中隊の反応なしです! しかし機体の発進情報はありますので、恐らく友軍の陽動の方へ向かっているのだと思われます!』


「なら時間との勝負か……カレン! ASの相手は俺がする! 地上とセルバンテスの防衛を皆と任せたぞ!」


「えっ! は、はい! 了解です!」


 いきなりの指示に驚きながらも、カレンはレインの命令に了解した。 

 それと同時にレインのイーグルは一気に加速して、セルバンテスから離れて行った。


「は、速い! 凄い加速……!」


 一瞬で目の前からイーグルが消えた事にカレンは驚くが、すぐにそんな場合じゃないと頭を切り替えた。


「イーグル隊、各機! 隊長の指示通り! セルバンテス防衛と地上援護よ!」


「了解!」


 カレンはレインの最初の指示通り、各機へセルバンテス防衛と地上への攻撃に集中する様に指示を出した。


 そして各イーグル隊はセルバンテスの上に降りて、地上へビームや実弾を撃ったり、空からの攻撃に警戒に入った。


 それを確認したカレンはまず安心し、あとはカタストロを腐らせない様に動かねばと考える。


 そしてエクリプスは、セルバンテスから離れ過ぎない位置まで飛び、地上へとビームを撃ち続けた。


 その結果、地上の被害は甚大となり、敵地上部隊は悲鳴をあげた。


『撃たれる! 空も援護してくれ!?』


『あののマークの機体だ! 奴等を狙え!』


 実際は<翼を広げた、蒼い渡り鳥>と<傷付いた赤き鷹>のマークなのだが、地上からはそう見えていた。

 

 特にカレンのは前回の戦いでマークに傷が付き、まだ直していなかった。

 だから離れると、赤の塗装が溶けたのと傷によって、赤い鳥が赤い鎖に巻かれた様に見えたいたのだ。


 だが当の二人は、そんな間違いを気にする暇もなく攻撃を続けていた。

 そしてレインは、空戦装備のアウィス部隊との戦いを始めていた。


「貰った――!」


『後ろを取られた!? だれかぁ―—』


 援護を求めようとした敵の悲鳴と共に、また1機、また1機とレインの乗るイーグルは敵を撃墜していく。


『あんな馬鹿みたいなビームガン持って、なんであんな動きが出来るんだ!?』


『誰か助けてくれ! あの青十字を何とか――』


 レインの駆るイーグルは、一切の慈悲を与えずに更に高機動で敵を討っていた。

 それも大型のカタストロを使ってだ。


 大型ビームガンを持ちながらの高機動戦闘。

 それをしながらレインは、敵を撃墜しては、すぐにレーダー・センサーへ意識して獲物を探す。


 無論、その間でも彼はイーグルの動きを止める真似はしない。

 そんな彼の活躍もあり、8機はいた空戦型アウェスは残り3機までに減っていた。


 地上でも歩兵部隊が一気に基地まで強行し、戦車や装甲車を使って基地攻略を始めていた。

 セルバンテスからの援護射撃もまだ終わらず、カレンや他のイーグル隊も頑張っている。


 このまま作戦が成功する。

――レインとカレンを覗いた者達が、そう思った時だった。


 ブリッジでは高速で接近するASの反応を捉えた。


『緊急連絡! 高速で作戦宙域に接近する機影あり! 数は7です!』


『速い!? 通常機よりも数倍速く、あと1分以内でイーグル1と接敵します!』


 セルバンテスからの連絡でパイロット達に緊張が走った。

 正体は奴等しかいないと、レインもすぐにレーダーで捕えた。


「来たか……! スカイラスの魔犬中隊!」


 レインはすぐに、敵の来る方向を見ると、そこには7機の機影が見えた。


 まるで鮮血を浴びたかの様な鮮明な赤と、乾いた血の様な赤黒い二つのカラーリングをしたAS。

 そして赤い魔犬のパーソナルマークが、7機全機に刻まれていた。


 そしてオープンチャンネルを通じ、敵パイロットの声が、宙域全体に聞こえた。


『やはり陽動だったか……だが、我々がいる限り。このアンダーアス基地は落とせんぞ!』


「上等だ。下手な因縁は要らない。ここで全機――落とす!」


 レインのイーグル・ストラトスEと、魔犬部隊のAS――ブラッド・イーグルFファングが今、交戦を開始した。

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